食べ放題で飲食物の持ち帰りは罪になる? 法的責任や処罰を解説
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川越市はグルメの街としても名高いエリアです。JR川越線の川越駅、西武新宿線の本川越駅、東武東上線の川越市駅を中心に商店街が広がっており、多数の飲食店が軒を連ねています。
飲食店で人気のサービスが「食べ放題」です。対象の料理をいくら注文しても均一料金になるため、コストを抑えつつ、思い切り料理を楽しみたい方をターゲットにして、多くの飲食店が食べ放題サービスを実施しています。
一方で、食べ放題におけるルール違反やマナー違反も増えており、飲食店側も警戒を強めています。特に、禁止されているのに飲食物を持ち帰る行為は、ルールやマナーの違反にとどまらず、犯罪になってしまう可能性もあるので注意する必要があります。
本コラムでは、食べ放題における「持ち帰り」で罪に問われる可能性について、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。
1、食べ放題で飲食物を持ち帰ると「盗んだ」ことになる?
一般的に、飲食店における「食べ放題」や「飲み放題」は、制限時間内であれば対象の飲食物を均一料金で飲食できるサービスを指します。
基本的には、対象の飲食物ならたくさん注文しても料金は変わりません。
また、陳列している飲食物を自由に選んで取るビュッフェスタイルでも、やはり時間内なら均一料金で好きなだけ飲食できます。
ただし、食べ放題の対象となるのは、原則として「店内での飲食」に限られています。
もし、飲食物を持ち帰ると「盗んだ」と判断されて、罪を問われてしまう可能性があるので注意しましょう。
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(1)無許可で飲食物を持ち帰る行為は窃盗罪にあたる
食べ放題の飲食店で、店側の許可を得ずに飲食物を持ち帰ると、刑法第235条の「窃盗罪」にあたるおそれがあります。
窃盗罪とは、他人の財物を窃取した者を罰する犯罪です。
わかりやすくいえば、他人の所有物やお店の商品などを盗んだ者を処罰の対象としています。
「食べ放題」では、基本的には対象のメニューを好きなだけ注文できますが、一定のルールが存在します。
多くの飲食店で実施されているのが「時間制限」ですが、さらに、ほとんどの飲食店は「持ち帰り」も禁止しています。
食べ放題の対象メニューに含まれていても、店側が想定して認めているのは「店内での飲食」であり、持ち帰りは認めていません。
すると、無許可で飲食物を持ち帰る行為は、店側の意思に反して飲食物を「勝手に持ち去った」ことになるので、たとえ食べ放題の料金を支払ったとしても「盗んだ」と判断されて、窃盗罪が成立する可能性があるのです。 -
(2)窃盗罪で科せられる刑罰
窃盗罪には、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています。
食べ放題で飲食物を持ち帰ったからといって必ず刑務所に収監されたり、多額の罰金を徴収されたりするわけではありませんが、注意を受けたのに持ち帰りをやめない、何度も同様の行為を繰り返しているといった場合には、悪質性が高いと評価され、厳しい処分が科せられる可能性が高くなります。
また、飲食店には店舗の利用や立ち入りを管理・制限する権限があるため、いわゆる「出入り禁止」を言い渡されて今後の利用を断られる可能性がある点にも注意しましょう。
2、許可があれば合法? 持ち帰りが罪になるケース・ならないケース
食べ放題で飲食物を持ち帰る行為は違法になると考えられます。
ただし、正規の手順を踏めば罪にならない可能性もあるので、一律に犯罪に該当するわけではありません。
以下では、持ち帰りが罪になるケースと罪にならないケースについて、具体的に解説します。
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(1)犯罪になるのは「無許可」で持ち帰った場合
持ち帰りが「盗んだ」と判断されるのは、飲食店側が「持ち帰りを禁止している」場合です。
店内での飲食のみのために提供された飲食物を、店側の意思に反して店外へと持ち去る行為が窃盗罪にあたるので、無許可で持ち帰れば犯罪になるということです。
なお、店内に「持ち帰り禁止」の張り紙がなかったり、従業員から持ち帰りはお断りするという説明がなかったりするなど、特に持ち帰りを禁止することが明示されていなくても、窃盗罪が成立する可能性はあります。
「持ち帰り禁止」と具体的に明示されていなくても、食べ放題というサービスでは店内で時間制限などのルールに従って提供されることは一般的な常識であり、通常は説明がなくても食品衛生などの観点から持ち帰りが認められないと当然に理解されるものだ、と考えられるためです。 -
(2)店側の許可があれば罪にならない
たとえば、料理を注文しすぎて途中でおなかがいっぱいになってしまった、ビュッフェスタイルで皿に料理を取り過ぎてしまったが戻すわけにもいかないといったケースでは、飲食店側の判断によって持ち帰りが許可される可能性があります。
許可を受けている以上は「盗んだ」とはいえないので、飲食物を持ち帰っても罪にはなりません。
ただし、持ち帰りを許可している場合でも、持ち帰りの際に別料金を請求する、持ち帰り用の容器を有料で販売するといった対応を取っている飲食店がほとんどです。
自宅から持参した容器やビニール袋などでの持ち帰ろうとする行為は認められない可能性が高いうえに、はじめから持ち帰りをたくらんでいたと判断されやすくなるので、止めておいたほうがよいでしょう。
3、持ち帰ったあとで警察から連絡! どうすればいい?
警察から連絡があったということは、飲食店が被害を相談したり被害届を提出したりといった対応をとった可能性が高いと考えられます。
警察は捜査の対象として当事者から事情を尋ねたいと考えているので、警察署などへの出頭を求められることになるでしょう。
警察署では、取調官から実際に飲食店を利用したのか、食べ放題で飲食物を持ち帰った事実はあるのかといった点を中心に質問を受けることになります。
呼び出しを受ける段階では、すでに警察はある程度の証拠や確証を得ていると考えられます。
したがって、警察から出頭を求められた場合は素直に応じるようにしましょう。
4、持ち帰りトラブルは店側との示談交渉による解決が期待できる
安易な考えから食べ放題の飲食物を持ち帰ると、窃盗罪に問われてしまう危険があります。
大きなトラブルに発展してしまう前に、飲食店側と示談交渉を行って、穏便な解決を目指しましょう。
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(1)示談とは?
「示談」とは、法的なトラブルについて、加害者と被害者が話し合いによる解決を図ることを意味します。
食べ放題の飲食物の持ち帰りトラブルでいえば、飲食店の経営者や責任者に対して真摯(しんし)に謝罪したうえで、持ち帰ってしまった飲食物の代金などを含めた示談金を支払うのが一般的な解決方法です。 -
(2)示談が成立した場合に期待できる効果
飲食店側との示談交渉が成立すると、被害届や刑事告訴が取り下げられる可能性があります。
基本的には、被害届や刑事告訴が取り下げられると、被害者には「加害者を罰してほしい」という意思がなくなったと評価されることになります。
そうなると、それ以上捜査や刑事手続きが進まなくなり逮捕や刑罰を回避できる可能性が高まります。
もっとも、加害者本人やその家族などが何度も示談交渉を申し入れていると反感を買い、かえって事態が難しくなるおそれもあります。
そこで、示談交渉を行う前に弁護士に相談することや、交渉を弁護士に依頼して代行してもらうことも検討しましょう。
5、まとめ
飲食店の「食べ放題」では、飲食店側が決めたルールに従って飲食を楽しまなくてはなりません。
禁止されているのに飲食物を持ち帰ってしまうと、単なるルール違反やマナー違反ではなく「窃盗罪」に問われるおそれがあります。
食べ放題の飲食物を持ち帰って罪を問われるなどの大きなトラブルに発展してしまった場合には、示談交渉などを通じた解決を目指すために、早めに弁護士に相談しましょう。
飲食店に関する法的トラブルが発生した場合には、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
さまざまなトラブルを解決してきた実績豊富な弁護士が、穏便な解決を目指してサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています