限定責任能力者とは何か。責任能力について弁護士が解説

2024年02月13日
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限定責任能力者とは何か。責任能力について弁護士が解説

報道では、「責任能力」という用語が登場することがあります。例えば、「責任能力の有無を含めて慎重に調べを進めていく」といった表現を耳にしたことはないでしょうか。

本コラムでは「責任能力」や「限定責任能力者」の意味や判断基準、責任能力がないと判断された場合はどうなるのかなどの疑問について、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、刑事事件における「責任能力」とは?

まずは、「責任能力」の意味や法律上の規定について解説します。

  1. (1)「責任能力」の意味

    刑事事件における責任能力とは、まさに読んで字のごとく「自らの罪の責任を負う能力」を意味します。具体的には、責任能力とは、「行為の違法性を弁識し、かつ、それに従って自己の行為を制御する能力」のことをいいます

  2. (2)責任能力に関する法律上の規定

    責任能力に関する規定は、刑法第7章の「犯罪の不成立及び刑の減免」に明記されています。

    • 心神喪失(第39条1項)
      精神の障害によって、行為の違法性を弁識する能力がまったくないか、または、弁識に従って行動する能力がまったくない状態をいいます。
      精神的な疾患のほか、生来の障害やアルコール・薬物などによる影響を受けてこれらの能力を欠いた状態も心神喪失に含まれます。
      心神喪失者は、「責任無能力」であるから、後述のとおり、その行為は、不可罰とされます。

    • 心神耗弱(第29条2項)
      精神の障害によって、行為の違法性を弁識する能力が著しく減退しているか、または、弁識に従って行動する能力が著しく減退している状態をいいます。
      心身耗弱者の行為は、後述のとおり、必ず刑が減刑されます。

    • 14歳未満(第41条)
      14歳に満たない者は、刑事未成年として責任無能力者とされ、その行為は、不可罰とされます。

2、責任能力の有無はどうやって判断するのか?

対象者の精神状態が、心身喪失や心身耗弱に該当するかどうかは、あくまでも法律判断であるため、最終的には、担当する裁判所の判断となります。したがって、必ずしも医師等による鑑定を要せず、また、鑑定と異なる判断をしてもよいことになります。しかしながら、その判断にあたっては、医師等による鑑定意見が提出されている場合には、裁判所は、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、かかる鑑定意見を十分に尊重しなければならないとされています。

3、責任能力に問題があるとどうなるのか?

以下では、責任能力を欠いていたり減退していたりする人が、刑事事件の法的手続きにおいてどのように扱われるかについて解説します。

  1. (1)限定責任能力者の場合

    心神耗弱による限定責任能力者の場合は、刑法第39条2項の定めによって刑が減軽されます。
    「減軽」とは、法定刑・罰則の範囲を軽くする制度です。
    減軽が適用されると、例えば、法定刑や罰則が「〇年以下の懲役」などと定められた有期懲役・有期禁錮については、長期・短期ともに2分の1になります。

    なお、刑が減軽される制度としては、犯人が捜査機関に発覚していない罪を白状して自らの処罰を委ねる「自首」や、犯行の実行に着手したもののこれを遂げなかった「未遂」、犯罪の情状に酌むべき事情があるときの「酌量」などがあります。
    ただし、これらの場合は裁判官に減軽をするか否かの判断が委ねられており、必ず減軽されるとは限りません。
    一方で、心神耗弱による限定責任能力者と認められた場合は、必ず刑が減軽されます。
    これを「必要的減軽」といいます。

  2. (2)責任無能力者の場合

    心神喪失者については刑法第39条1項の規定によって、14歳未満の者は刑法第41条の規定によって、それぞれ責任無能力者を「罰しない」と明記されています。したがって、その行為は、不可罰とされます。

    ただし、責任無能力者として不可罰となっても、一定の場合、そのまま社会復帰できるわけではない可能性があります。
    心身喪失等の状態で、一定の重大な他害行為を行ってしまった場合、強制医療の必要があるかどうかを判断するために、「鑑定入院」となる可能性があります。

4、民事的な責任は監督者が追及されることもある

犯罪によって相手に損害を与えた場合は、刑事責任とは別に弁償や治療費などの負担、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いといった民事責任も追及されることになります。
以下では、限定責任能力者や責任無能力者の民事責任の扱いについて解説します。

  1. (1)限定責任能力者の行為によって生じた損害の民事責任

    刑事的に限定責任能力者であると判断された場合は、基本的に「責任を負えないとまではいえない」という扱いであるため、民事的にも本人がその責任を負うことになる可能性が高いと思われます。

    また、刑事責任と同じく、その責任が限定されると判断されたとしても、限定責任能力者を監督する立場の人が共に責任を負うことになる可能性があります。

  2. (2)責任無能力者の行為によって生じた損害の民事責任

    責任無能力者の場合は、原則として、本人は、その賠償の責任を負わないとされています。

    民法第713条は、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態である間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。」と定めています。
    また、民法第712条は、未成年者について、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と明記しています。

    ただし、本人が責任を負わなくても、本人を監督する立場の者が、賠償する責任を負う可能性があります。

    なお、民法第713条但し書きには、「故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りではない。」と明記されています。
    たとえば、自分の意思で過度に飲酒して酩酊状態に陥ったうえで罪を犯した場合は、自らの故意または過失によって一時的に精神障害の状態を招いているため、賠償責任は免れることはできないことになります。

5、まとめ

罪を犯しても、「責任能力」が失われている、あるいは制限されていると判断されれば、刑罰が科せられなかったり、減軽されたりする可能性があります。
ただし、責任能力の有無や程度の判断は、医師による鑑定結果による裁判官の判断によるため、たとえば、罪を犯した本人が、「病気のせいだ」、「酒に酔っていて記憶がない」などと主張するだけでは認めてもらえない可能性があります
法的な専門的知識が必要となることから、個人での対応は困難なことが多いため、弁護士に相談してサポートを受けることをご検討ください。

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経験豊富な弁護士が、罪を犯してしまったご本人や不安を感じているご家族に寄り添いながら、解決のために尽力します。

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