動物愛護法違反を疑われている場合、どうすればいい?
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令和3年11月、長野県内で子犬の繁殖場を営む経営者らが多数の犬を虐待したとして、動物愛護法違反容疑で逮捕されたという報道がありました。逮捕前の立ち入り監査では、適正な飼育に必要な基準が遵守されていなかったことから、約1000匹の犬の大半が埼玉県内の関係業者に移送されることになりました。
動物虐待を取り締まる法律に「動物愛護法」がありますが、令和2年6月1日に動物愛護法が改正され、動物の虐待などの行為があった場合の罰則が強化されることになりました。動物虐待はあってはならないことですが、動物虐待に関する事件が後を絶たないのが現状です。
とくに犬や猫などのペットを飼われている方は、動物虐待の疑いをかけられないようにするためにも、動物愛護法が禁止する行為をしっかりと理解しておくことが大切です。本コラムでは、動物愛護法で禁止される行為やその罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。
1、動物愛護法とは、その違反行為とは
まず、動物愛護法とはどのような法律であるのか、動物愛護法で禁止されている違反行為にはどのようなものがあるのかについて、概要を解説します。
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(1)動物愛護法とは
「動物愛護法」の正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」です。また、「動物愛護管理法」などとも呼ばれます。
動物愛護法では、人と動物との共生社会の実現を図ることを目的として、動物の愛護に関する事項や動物の管理に関する事項が定められています。そして、違反行為については、刑罰をもって対応されるのです。
「動物愛護法は、ペットショップやブリーダーなどの動物取扱業者に適用される法律だ」と考えられている方も多くいらっしゃいます。
しかし、動物愛護法では、一般的な飼い主に対する義務や努力義務も規定されています。一般の方であっても、動物愛護法に違反する行為があった場合には、罪に問われる可能性があるのです。
なお、動物愛護法では、犬や猫といった家庭で飼養されている動物以外にも、家畜動物、実験動物、展示動物などが対象になります。 -
(2)動物愛護法で禁止されている違反行為
個人を対象として動物愛護法で禁止されている違反行為としては、以下のような行為があります。
① 愛護動物をみだりに殺傷する行為
動物愛護法44条1項では、「愛護動物」をみだりに殺傷する行為を禁止しています。
愛護動物の定義は、以下の通りです。
- 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる(動物愛護法44条4項1号)
- 上記を除く人が占有している哺乳類、鳥類、爬虫(はちゅう)類に属するもの(動物愛護法44条4項2号)
なお、動物愛護法44条4項1号では「人が占有している」という要件がついていません。
したがって、同号にあたる動物については、人が占有していないものについてもみだりに殺傷をすれば動物愛護法違反となるのです。
たとえば、野良犬や野良猫は、特定の飼い主がおらず、人が占有しているとはいえませんが、野良犬や野良猫をみだりに殺傷すれば動物愛護法違反となります。
「みだりに殺傷する」とは、正当な理由なく愛護動物を殺したり、傷つけたりする行為です。したがって、正当な理由に基づいて愛護動物を傷つける行為は動物愛護法違反とはなりません。
「正当な理由」がある事例としては、以下のようなものがあります。
- 犬や猫に対する去勢手術
- 野良猫の耳カット(不妊治療を実施した証し)
また、みだりに殺傷する行為は「故意犯」であるため、過失による殺傷は、処罰の対象にはなりません。
たとえば、車を運転中に野良猫をひいてしまったとしても、故意のない行為であるため、動物愛護法違反とはならないのです。
② 愛護動物を虐待する行為
動物愛護法44条2項では、愛護動物を虐待することを禁止しています。
「愛護動物を虐待する行為」については、特に限定されていません。
愛護動物を殴る、蹴る、熱湯をかけるといった愛護動物の身体に外傷が生じる危険のある行為や心理的抑圧、恐怖を与えるといった行為も、積極的虐待があれば、当然に動物愛護法違反とされるのです。
また、積極的虐待ではなく、エサを与えずに放置、病気やけがをしたにもかかわらず治療を行わないなどの消極的虐待(ネグレクト)についても、動物愛護法違反となります。
動物愛護法44条2項の虐待についても「みだりに」という限定が付されていますので、正当な理由がある場合には虐待にはあたりません。
③ 愛護動物を遺棄する行為
動物愛護法44条3項では、愛護動物を遺棄することを禁止しています。
愛護動物の飼い主には、最後までしっかりと動物の面倒をみることが義務付けられています。野良猫や野良犬が増えることによって近隣住民に多大な迷惑かけることになりますし、日本の自然の生態系には存在しない生物が放たれると、生態系の破壊や農作物への被害など深刻な問題が生じてしまうためです。そのため、「愛情がなくなった」「世話が面倒になった」などの理由で愛護動物を捨てたり、野生に返したりする行為は、動物愛護法違反となるのです。
2、動物愛護法に違反した場合の罰則
動物愛護法に違反した場合には、以下のような罰則が科されることになります。
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(1)違反行為別の罰則
動物愛護法で禁止される以下の行為をした場合には、懲役または罰金刑に処せられます。
① 愛護動物をみだりに殺傷する行為
動物愛護法44条1項に違反して愛護動物をみだりに殺傷した場合には、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
一般の個人に対して科せられる動物愛護法違反の罰則としては、最も重い内容となっています。
② 愛護動物を虐待する行為
動物愛護法44条2項に違反して愛護動物を虐待した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
③ 愛護動物を遺棄する行為
動物愛護法44条3項に違反して愛護動物を遺棄した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。 -
(2)改正動物愛護法により罰則が強化
悪質な動物虐待などの事件が後を絶たないことから、動物虐待に対する取り締まりを強化する目的で、令和2年6月1日から改正動物愛護管理法が施行されて、罰則も強化されることになりました。
動物愛護法違反の罰則は、以下のように変わりました。
なお、上記に記載した罰則は、改正後のものになっています。
改正前 改正後 愛護動物をみだりに殺傷した場合 2年以下の懲役または200万円以下の罰金 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 愛護動物を虐待、遺棄した場合 100万円以下の罰金 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
また、改正動物愛護管理法では、獣医師に対してみだりに殺傷された動物や虐待を受けた疑いのある動物を発見した場合には、関係機関に通報することが義務付けられるようになりました。
3、動物愛護法違反を疑われているなら、弁護士に相談を
愛護動物を虐待したなどの理由で動物愛護法違反を疑われている場合には、弁護士にまでご相談ください。
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(1)動物愛護法違反の有無についてアドバイスをもらうことができる
愛護動物を殺傷したり、虐待したりした場合には、動物愛護法違反の疑いをかけられて、警察から事情を聴取される可能性があります。
しかし、客観的に動物虐待などに該当する行為であったとしても、正当な理由に基づいてなされたものについては、動物愛護法が禁止する虐待などの行為にはあたりません。そのため、動物愛護法違反の疑いをかけられた場合には、動物愛護法が規定する構成要件の解釈が問題になることがあります。
弁護士であれば、どのような行為が動物愛護法によって禁止されている虐待行為などに該当するかを正確に判断することができます。
ご自身の行為が動物愛護違反に該当するかどうか不安だという方は、まずは弁護士に相談をして、アドバイスを得るようにしましょう。 -
(2)有利な処分の獲得に向けたサポートを受けることができる
動物愛護法違反が認められる場合、事案の内容によっては、逮捕や勾留といった身柄拘束を受ける可能性があります。そのため、身柄拘束を受けてしまった場合には、早期の身柄解放に向けた弁護士のサポートが不可欠となるのです。
また、身柄拘束を受けることなく在宅で捜査が行われる場合であっても、捜査機関からの取り調べに適切に対応しなければ、不当に重い刑罰を受ける可能性もあります。
したがって、具体的な取り調べの対応方法についても、弁護士からアドバイスを受けるようにしましょう。
このように、動物愛護法違反の疑いをかけられてしまった場合には、早めに弁護士に相談をすることによって、その後の処分の結果が大きく異なってくる可能性があるのです。
4、まとめ
愛護動物を虐待するなどの行為には、懲役刑も含んだ重い刑罰が規定されています。動物愛護法違反の疑いをかけられているという方は、不利益を最小限にするためにも、早めに弁護士に相談しましょう。
埼玉県川越市や近隣市町村にご在住で、動物愛護法違反に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています