SNSの誹謗中傷投稿の削除方法とは? 川越オフィスの弁護士が解説
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平成30年9月、さいたま地方裁判所でインターネット掲示板の書き込みが名誉毀損(きそん)に当たるかどうかが争われた裁判の判決が言い渡されました。電子掲示板に「悪魔」などと名指しで書き込みをされたため、名誉毀損(きそん)であると訴えたものです。判決は、宗教上の意味合いを含めて批判する場合は「悪魔」などの表現は「相当性を欠くものとまではいえない」と指摘し、請求は棄却されています。
今回の判決では、名誉毀損には当たらないと裁判所が判断しましたが、インターネット上の書き込みが名誉毀損に当たるかどうかの判断は、個々の裁判の結果を待たなければわからないほど難しい場合もあります。また、書き込まれた投稿を削除することが困難なケースも少なくありません。
では、FacebookなどのSNSに書き込まれた誹謗中傷の投稿についてはどのような対処ができるのでしょうか? ここでは、インターネット掲示板やSNSに書き込まれた誹謗中傷投稿の削除方法や、書き込みをした人が問われ得る罪などについて解説いたします。
1、罪に問われる可能性があるSNSの誹謗中傷とは
「匿名だからSNSの誹謗中傷は罪に問われない」と考え、あきらめてしまう方は少なくないようです。しかし、場合によっては、誹謗中傷した相手に刑事罰が科されることもあります。
同時に、損害賠償という民事上の責任を負わせることができるケースもあります。ここでは、SNSの誹謗中傷に適用される可能性がある刑事罰の一部と、民事上の責任について、事例を交えながら解説します。
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(1)名誉毀損(きそん)罪
名誉毀損(きそん)罪は、あなたの社会的地位や名誉を低下させるような事実を摘示する発言や書き込みについて成立する場合があります。たとえば「○○(フルネーム)は、不倫している」という書き込みは、名誉毀損(きそん)罪に問われる可能性があるのです。たとえ書き込まれた内容が真実であっても、罪に問われることがあります。
名誉毀損罪で有罪となれば、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と刑法第230条で規定されています。ただし、名誉毀損(きそん)罪は親告罪なので、自分で「告訴」する必要があります。 -
(2)侮辱罪
ネット上の「ハゲデブ」「臭そう」「低脳」などの書き込みについては、侮辱罪が成立する可能性があります。侮辱罪で有罪になると「拘留又は科料に処する」と刑法第231条で規定されています。侮辱罪も名誉棄損罪と同様親告罪ですので、相手に刑事罰を受けさせたいのであれば、刑事告訴の手続きを行わなければなりません。
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(3)脅迫罪
「お前の家を特定したから明日火をつけに行く」
「お前を後ろからバットで殴る」
このような書き込みは「脅迫罪」に該当する可能性があります。脅迫罪は親告罪ではないので、告訴がなくとも刑事事件化されることもあります。脅迫罪で有罪になると「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と刑法第222条で規定されています。 -
(4)業務妨害罪
「A店は賞味期限切れの食材を使っている」
このように、事実ではない書き込みで、企業や個人の業務を妨害すると、刑法第233条に規定されている「業務妨害罪」が成立する可能性があります。根も葉もないうわさでも、企業や商店は風評被害で売り上げが大きく減少することも少なくありません。虚偽の風説や偽計により業務妨害を行い有罪になった者は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。 -
(5)民事上の損害賠償責任を問う「損害賠償請求」
ここまで解説した刑事罰とは別に、SNSに誹謗中傷を書き込んだ本人に民事上の責任を負わせることができる場合があります。「損害賠償請求」と呼ばれるもので、実際に金銭的損害が発生していなくても、精神的損害に対する賠償、つまり、「慰謝料」の請求が可能なケースもあります。
慰謝料などの損害賠償請求をする場合は、刑事告訴とは別に、自ら民事上の請求をしなければなりません。そのためには、書き込みをした本人の氏名や住所などを特定する必要があります。SNSや各種掲示板のように匿名性が高いものは、サイト管理人に「発信者情報開示請求」を行い、書き込みを行った本人の情報を提供してもらわなければなりません。
発信者情報開示請求や損害賠償請求の手続きは、個人では難しいため、弁護士に相談することをおすすめします。
2、SNSで誹謗中傷被害にあったらやるべき5つの対策
SNSで誹謗中傷の被害にあったら、速やかに対策をとる必要があります。過去には、SNSの誹謗中傷からストーカーに発展し、痛ましい事件が発生したこともあるのです。だからこそ、SNSの誹謗中傷は放置せずに、素早く削除依頼などの対策をしたほうがよいでしょう。
SNSの誹謗中傷書き込みの削除手順とやるべきことは、以下の5ステップになります。
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(1)SNSや掲示板の規約を確認
まずは、誹謗中傷が書き込まれたSNSや掲示板の規約やガイドラインを読んで、書き込みが規約に抵触しているかどうかを確認します。
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(2)証拠を保存
誹謗中傷の書き込みを証拠隠滅のために削除されると、後々刑事告訴や損害賠償請求をするのが難しくなってしまうことがあるので、書き込み部分をスクリーンショットなどで保存しておきましょう。
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(3)SNSや掲示板の管理者に削除依頼を出す
証拠を保存したら、サイト管理会社や管理人に削除を依頼します。多くのサイトで削除依頼フォームが用意されていますので、フォームに従って必要事項を入力しましょう。
Facebookの場合は、該当する書き込みの右上にある三角ボタンを押すと「投稿を報告」という選択肢が現れます。クリックして削除依頼手続きを進めてください。 -
(4)削除依頼が認められなければ法的措置に移行
削除依頼を出したにもかかわらず、誹謗中傷書き込みを削除してもらえない場合は法的措置をとるしかありません。ネット上の投稿を削除するには裁判所の「仮処分」か「訴訟」が必要になります。法的措置の手続きは複雑で個人が対応すると時間がかかるため、弁護士に相談したほうがよいでしょう。
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(5)刑事告訴、損害賠償請求
SNSの誹謗中傷の被害にあったら、上記の削除手続きと並行して刑事告訴や損害賠償請求の手続きも行いたいものです。書き込みを削除するだけでは、犯人に罰を与えることはできません。名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪などは、親告罪といって被害者やその法定代理人等が刑事告訴をしなければ、起訴することができません。詳しくは弁護士に相談してください。
また、加害者に対する民事の損害賠償請求は、被害者が個人的に行うと、身の危険を伴うおそれがあります。弁護士を代理人として、すべての窓口となってもらえるよう、依頼することをおすすめします。
3、SNSの誹謗中傷は早い段階で弁護士に相談すべき理由とは
SNSの誹謗中傷はインターネット上の出来事だからと甘く見ていると、実生活にまで被害が及び、取り返しのつかない事態に発展してしまうケースもあります。
2013年4月、カナダで、ネットいじめが原因で自殺するという痛ましい事件が発生しています。被害者の女子高生は、複数の男性から乱暴された際に写真を撮影され、この写真が拡散して数日のうちに学校中に広まりました。学校で嫌がらせを受けただけでなく、ネット上のいじめもエスカレートしていき、親しかった友人までもが「ふしだらな女は学校に来るな」などと交流サイトに書き込んだのです。転校を繰り返してもネットいじめから逃れることはできず、とうとう自殺に追い込まれてしまいました。
あなたが受けているSNSの誹謗中傷も、放置しておくとこのような痛ましい事件に発展する可能性がゼロではありません。誹謗中傷されてから時間が経過すればするほど、被害が大きくなり取り返しがつかないことになるケースもあるのです。
個人で削除依頼を行っても、サイトを運営している企業や管理人が迅速に対応してくれないことが少なくありません。だからこそ、弁護士に依頼して速やかに削除依頼をし、事態を収束させる必要があるでしょう。
弁護士に依頼すれば、きちんと削除依頼を出した上で、刑事告訴や損害賠償請求などの手続きも必要に応じて進めることができます。SNSの誹謗中傷に毅然と対応するためには、ひとりで悩まず、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
4、まとめ
SNSの誹謗中傷書き込みについて、まずは、各サイトの規約によって削除依頼を出すことができます。ただし、サイトによっては一切削除依頼に応じないということもあり、被害者が泣き寝入りをするケースも少なくありません。その場合は、裁判などの法的措置をとる必要がありますが、複雑な手続きを伴うので、個人では速やかに対策をとることは難しいかもしれません。
SNSで拡散される誹謗中傷被害を早く終わらせたいのであれば、まずはベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士へ相談してください。ネット上の誹謗中傷事件の実績が豊富な弁護士が、適切なアドバイスや対策を行います。
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