違法建築を買ってしまった! 売り主を訴えることはできる?

2023年06月05日
  • 一般民事
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違法建築を買ってしまった! 売り主を訴えることはできる?

建築基準法その他の法令に違反している建築物のことを、一般に「違法建築」といいます。違法建築の売買をすること自体は違法ではないため、売買によって違法建築を取得したとしても法律的な罪に問われることはありません。

しかし、違法建築には増築や改築ができず、売却が困難であるなどのデメリットもあります。もし、違法建築とは知らずに購入してしまった場合には、売り主の責任を追及して、契約を取り消せる可能性があります。

本コラムでは、違法建築の概要と違法建築と知らずに買ってしまった場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、違法建築とはどんな物件か

以下では、違法建築とはどのような物件であるかという概要は、違法建築を所有していた場合に生じるデメリットについて解説します。

  1. (1)違法建築とは

    違法建築とは、建築基準法その他の法令などに違反して建てられた建築物のことをいいます。
    違法建築はさまざまな原因によって生じますが、代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 新築時には建ぺい率、容積率の基準を満たしていたものの、無許可の増改築により基準をオーバーした
    • 建築確認申請時に提出した図面と、実際の建物の仕様や構造が異なっている
    • 建築確認申請時に許可を受けた用途とは異なる用途で使用されている
  2. (2)違法建築を所有していた場合のデメリット

    違法建築であっても、売買することは可能です。
    しかし、違法建築を所有することには、以下のようなデメリットがあります。

    ① 行政からの使用禁止や是正指導が入る可能性がある
    建築基準法その他の法令は、建築物が備えるべき最低限の基準を定めたものです。
    これらの基準には、居住者や周辺住民の安全性という観点から設けられた基準もあります。
    違法建築が基準を満たしていない場合には、防火や耐震、避難や衛生などに関する危険が生じるおそれがあるのです。

    違反の程度や内容によっては、行政から違反の是正が求められることがあります
    また、あまりに危険であり緊急の必要性がある場合には、使用禁止や使用制限命令を受ける可能性もあります。
    使用禁止などの行政命令に従わない場合には、罰則が適用されることもある点に注意してください。

    ② 売却が困難
    違法建築であっても、売却することは可能です。
    しかし、違法建築である旨は買い主に告知しなければならないため、売却しようとしても、違法建築であることを知りながら購入する人は少ないでしょう。

    購入者が見つからないと売却価格を下げて販売することになるため、違法建築は、不動産投資という観点からみても資産価値が低い物件といえます

    ③ 融資を受けられない
    金融機関から融資を受ける必要性が生じたとしても、違法建築では、金融機関から担保価値がないものとみなされてしまい、違法建築を担保にして融資を受けることができない可能性が高いです。
    また、違法建築の購入希望者が現れたとしても、住宅ローンを利用することができないため、現金一括払いができる人しか購入することができないのです。

2、既存不適格とはどんな物件か

違法建築と似たものに「既存不適格」というものがあります。
既存不適格とは、建築時には建築基準法その他の法令などの範囲内で建築されたものの、その後の法改正により現在の法令に適合しない状態になった建築物をいいます

建築関連法令は、時代の流れに応じて法改正を繰り返しているため、築年数の古い建物などは、一般的に既存不適格建築物であることが多いといえます。
検査済証のある既存不適格建築物は、違法建築として扱われることはありませんが、増改築やリフォームをする際には、現在の基準に合致させる必要があります。

3、違法建築と知らずに買ってしまった場合の対処法

違法建築と知らずに購入してしまった場合には、以下のような対処法を検討してください。

  1. (1)契約不適合責任の追及

    契約不適合責任とは、売買などの契約により引き渡された目的物に種類、品質、数量に関して契約内容と相違があった場合に、売り主が買い主に対して負う法的責任のことをいいます。

    売り主から違法建築であることの説明がなかった場合には、買い主としては、「法令に適合した建築物である」という前提で購入したと考えることができます。
    すると、実際の目的物と契約内容に齟齬(そご)が生じることになります。
    このような場合には、買い主は売り主に対して、契約不適合責任として、主に以下のような対応を求めることができます

    ① 追完請求
    追完請求とは、契約内容に適合しない目的物を引き渡された場合に、目的物の修補、代替物の引き渡し、不足分の引き渡しを求めることをいいます。

    引き渡された目的物が違法建築であった場合には、法令に適合する状態に修補すること請求できる可能性もあります。
    ただし、違法建築の内容および程度によっては、取り壊さなければ修補が困難なこともあります。
    そのような場合には、追完請求ではなく、損害賠償請求を検討しましょう。

    ② 損害賠償請求
    売買目的物に契約内容不適合があり、それによって買主が損害を被れば、売り主に対して、損害賠償請求をすることができる可能性があります。

    ③ 契約の解除
    追完請求をしたにもかかわらず、履行の追完を行わない場合には、買い主は、売り主との売買契約を解除することができます。

    ただし、契約不適合の程度が契約や取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約の解除までは認められません。
  2. (2)不利益事実の不告知による契約の取り消し

    違法建築物の売り主が不動産会社などの事業者であった場合には、消費者契約法に基づく「不利益事実の不告知」によって売買契約を取り消すことができる可能性があります。

    消費者契約法は、事業者と消費者との間で交渉力や情報量の格差から生じる不利な契約から消費者を保護するための法律です。
    個人間の売買では適用されませんが、売り主が事業者であれば、消費者契約法が適用されます。

    消費者契約法では、事業者が故意または重大な過失によって不利益となる事実を告知しなかった場合には、契約を取り消すことができると定めています(消費者契約法4条2項)。したがって、不動産会社から違法建築であることを告げられていなかった場合には売買契約を取り消して、代金の返還を求めることができる可能性があります

4、不動産の売買トラブルは弁護士に相談を

不動産の売買トラブルでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

  1. (1)トラブルに対処する方法をアドバイスしてもらえる

    不動産に関するトラブルを解決するためには、建築関連法令の正確な理解が不可欠であるため、専門知識を持たない個人が自分自身で対応することは困難です。

    法律の専門家である弁護士に相談すれば、トラブルに対処するための方法のアドバイスを受けることができます

  2. (2)売り主との対応を任せることができる

    違法建築であることを知らされずに建物を購入してしまった場合には、売り主の法的責任を追及していくことになります。
    その際には、売り主との交渉によってトラブルの解決を目指すことになる場合も多いです。
    しかし、売り主が不動産会社などの事業者だった場合には、個人である買い主に比べて交渉力や情報量に優れているために、法的責任を追及してもうまく言いくるめられてしまうおそれがあります。

    弁護士に依頼すれば、売り主との対応をすべて任せることができます。
    豊富な知識と経験を有している弁護士であれば、対等な立場で売り主と交渉を進めることができると思われます
    また、交渉に伴う精神的負担も大幅に軽減することができます。

5、まとめ

違法建築物を売買すること自体は法律的な問題はありませんが、違法建築物を購入することにはさまざまなデメリットが存在します。
違法建築物を購入するのは、デメリットを十分に理解してからにしましょう。
また、もし、売り主から違法建築物件であることを知らされずに購入してしまった場合には、売り主の法的責任を追及することも検討しましょう。

売り主の法的責任を追及する際には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
違法建築の売買でお困りの方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています