離婚協議が進まない場合にとるべき3つの方法

2022年06月28日
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離婚協議が進まない場合にとるべき3つの方法

埼玉県保健医療部保健医療政策課によりますと、令和2年、埼玉県では1万659組が離婚しており、人口千人に対する離婚率は1.49です。同年における全国の離婚率は1.57ですから、埼玉県内の離婚率は全国比でやや低めということができます。

離婚をするときは、まず夫婦間での協議から始めることが一般的です。しかし、離婚協議は思うように進まないために悩まれている方も、多々おられます。

本コラムでは、離婚協議が進まないときにとるべき方法について、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、そもそも離婚協議とは?

  1. (1)離婚協議とは?

    民法第763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定しています。

    役所に婚姻届を提出し法律上の婚姻関係にある夫婦は、いつでも夫婦当事者どうしの話し合い(協議)で合意することにより、離婚をすることが認められているのです。

    このような離婚に向けた夫婦間の協議のことを離婚協議といい、協議した結果による離婚を「協議離婚」といいます。

    日本には、「夫婦である以上、その関係を解消するためにはまず夫婦で話し合うことから始めるべきである」という考え方が慣行になっています
    このため、離婚協議は、たとえそれが成立しないとしても、後述する調停離婚や裁判離婚の前段階として行うことが多いです。

  2. (2)協議離婚のメリットとリスク

    協議離婚では夫婦2人だけで決着させることが基本であるため、後述する調停離婚や裁判離婚よりもコストがかかりません。
    これは、協議離婚のメリットといえます。

    一方で、多くの場合、協議離婚では法律の専門家が介在しません
    そのため、慣例や法律で定める基準よりも当事者の一方が不利な条件で決着してしまうおそれや、離婚条件をまとめた公正証書を作らなかったため合意したはずの離婚条件が履行されないというおそれがあるのです。

2、離婚協議(話し合い)の期間

「離婚協議を始めたら、いつまでに成立させなければならない」という法的な決まりはありません。
これは協議離婚だけではなく、調停離婚や裁判離婚でも同様です。

協議離婚は、家庭裁判所の期日(調停や裁判の日)が、多くても1月に1回程度しか入らない調停離婚や裁判離婚と異なり、離婚条件の合意次第では早期に離婚を成立させることができる可能性があります。

その一方で、離婚条件に関する話し合いが進まない場合、それが延々と続くことになる可能性もあります
その間は法的に離婚が成立していないことから、民法第760条に規定する婚姻費用の分担(基本的に収入の多い配偶者が少ない方の配偶者の生活費用を応分に出すこと)も継続するのです。

3、離婚協議が進まない理由

離婚協議を進めるためには、離婚に関するさまざまな条件を決めていかなくてはなりません。
しかし、離婚条件は夫婦それぞれの利益が相反するものですから、お互いの主張がぶつかりやすいものでもあります。そして、夫婦双方がどれかひとつでも離婚条件に同意しなければ、離婚協議が進まないおそれがあるのです

離婚協議が進まない原因となりえる条件の例としては、下記のようなものがあります。

  1. (1)親権

    民法第819条では、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない」と規定しています。
    つまり、民法では離婚後の父母による子どもの共同親権が認められておらず、夫婦のいずれかを離婚後の親権者と決めなければ離婚できないのです

    多くの人は、子供を配偶者に渡さずに自分の近くで育てたいと思うものです。
    そのために、離婚後の子どもの親権をめぐって争いとなり、離婚の話し合いが進まなくなるケースが多々あるのです。

  2. (2)養育費

    養育費とは、子どもが自立して生活できるようになるまで必要となるお金のことであり、離婚後に子どもを監護していない父母の一方が負担します。

    養育費の金額は、父母の収入や子どもの年齢や人数を基準にして、家庭裁判所が作成・公表している、「養育費算定表」がひとつの基準になります。
    また、支払いの終期は子どもが20歳になるまで、あるいは大学を卒業するまで、とするケースが一般的です。

    しかし、養育費の金額や支払いの終期は法律で規定されているものではありません。夫婦間で合意さえすれば、「一切支払わない」ということも可能です。
    このように、養育費の支払いの取り決めについては強行法規がありません。したがって、協議離婚の段階では、夫婦の話し合いで取り決めるしかないのです。

  3. (3)財産分与

    財産分与の基本的な考え方として、夫婦が婚姻期間中に形成・維持してきた財産は共有財産として、それぞれの貢献度に応じて離婚時に平等に分割を請求することができるというものがあります。

    「共有財産」とは、「夫婦が法律上の婚姻関係となってから、共同で形成・維持してきた財産」の全てを指します。原則として、財産の種類や名義は考慮されません。

    なお、夫婦が結婚前からそれぞれ個人名義で所有していた財産、および婚姻期間中であっても相続により取得した財産は、「特有財産」とされます。基本的に、特有財産は財産分与の対象とはなりません。

    ただし、上記条文のおける「請求できる」は、「請求されたら応じなくてはならない」というものではありません。つまり、養育費と同様に、民法では、離婚するときの財産分与そのものが義務付けられているわけではないのです

    また、財産分与の割合についても、過去の判例や慣行などから、夫婦が別居した時点または離婚が成立した時点における共有財産額の「2分の1ずつ」がひとつの基準とされています。

    しかし、民法やそのほかの法令で明確な規定が設けられているわけではありません。このため、分与対象の財産や割合などが問題となり、財産分与は離婚協議が進まない原因となりやすいのです。

  4. (4)配偶者が離婚に応じない

    配偶者に愛想を尽かして離婚協議をもちかけたとしても、相手のほうは未練が残っているという場合や、世間体や経済的な事情から離婚したくないという場合には、相手が離婚協議に応じないということもあります。

    そもそも裁判離婚でないかぎり、離婚は夫婦の同意がなくては成り立ちません
    そのため、まずは同意すべき事項について夫婦双方が話し合いのテーブルにつくことが前提条件となります。

    離婚する・しないというスタートラインから夫婦双方の主張が平行線である状況では、離婚協議は困難をきわめます。

4、相手が離婚したくない場合でも離婚できる?

配偶者が離婚したくないと考えているために離婚協議が進まない場合、離婚したい側としては、どのように対応すればよいでしょうか?

民法第770条では、配偶者に以下のような法定離婚事由があった場合には、離婚を求める裁判を提起できると規定しています

  • 配偶者に不貞行為(不倫)があった場合
  • 正当な理由がなく生活費を渡さない、同居しないなど、配偶者から悪意の遺棄があった場合
  • 配偶者が3年以上生死不明の場合
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
  • その他、著しい浪費行為や暴力行為など、配偶者に婚姻を継続し難い重大な事由がある場合


特に配偶者から不貞行為や悪意の遺棄、暴力行為などがあった場合、配偶者は有責配偶者となります。
この場合、配偶者に対しては離婚を求めるだけではなく、慰謝料を請求できる可能性もあります

5、離婚協議が進まないときに、とれる方策とは?

  1. (1)弁護士に依頼する

    夫婦2人だけの話し合いでは離婚協議が進まないと考えられる場合、できるかぎり早めに弁護士に相談することをおすすめします。

    離婚問題の解決に知見と経験のある弁護士であれば、離婚に向けた法的なアドバイスだけではなく、依頼者の代理人として配偶者と離婚協議を進めることを依頼することができます

    また、離婚協議が進まず後述するような調停や裁判になったとしても、代理人として主張書面や準備書面の作成、さらには裁判所への出頭など、離婚に向けたプロセスを進めることが可能です。

  2. (2)調停

    離婚における調停のことを、「夫婦関係調整調停」といいます。

    夫婦だけでは離婚協議が進まない場合、次のステップとして、所定の手続きを行うことで離婚調停を申し立てることができます。

    調停は、家庭裁判所で調停委員という男女2名が夫婦のあいだに入り、離婚に関する話し合いを進めます。配偶者とは顔を合わせないで済むため、夫婦だけのときよりも冷静な話し合いが可能になります

    調停で離婚の合意に至ると、家庭裁判所により合意内容をまとめた「調停証書」が作成されます。調停証書の内容は確定判決と同じ法的効力を持ち、取り決めたはずの養育費などの不払いがあった場合には、支払いについて強制執行を申し立てることが可能です。

  3. (3)裁判

    調停でも離婚に向けた協議が進まない場合には、「調停不成立」となります。その後、裁判所に離婚の訴えを提起することで、裁判に移行します。なお、離婚については「調停前置主義」が採られているため、原則として調停を経ずに裁判を提起することはできません。
    裁判所に離婚の訴えを提起すると、口頭や書面により、離婚に関する主張が展開されます。そして、裁判官からの勧告に基づく和解または判決によって、決着することになります。

    もし判決に不服がある場合は、高等裁判所や最高裁判所に上訴することになります。
    夫婦間による離婚協議や調停と異なり、裁判では必ず裁判官の「結論」が出ることも重要なポイントです

6、まとめ

「離婚協議が進まない」という事態を避けるうえで、弁護士はあなたの心強いパートナーとなります

ベリーベスト法律事務所 川越オフィスでは、離婚全般に関するご相談を承っております。離婚に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています