セルフレジで万引きしてしまったら逮捕される? 対処法を解説
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スーパーやコンビニなどで「セルフレジ」の導入が活発になっています。
令和4年10月には、川越市内の郵便局内に無人決済のコンビニが出店しました。オフィスビルや駅構内、官公庁などを中心に無人決済のコンビニが増えていますが、郵便局内での出店は全国初です。今後も、スーパーやコンビニに限らず、さまざまな小売店でセルフレジの導入が進められていくと予想されています。
そして、セルフレジのシステムを悪用した「万引き」への懸念は強く、万引き対策はより一層強化されている状況です。「店員と接触しないから」「周囲に人がいなかったから」といった軽率な判断から万引きをしていると、発覚してしまう可能性は高いでしょう。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・セルフレジでの万引きが発覚するケース、理由
・セルフレジでの万引きで問われる罪
・セルフレジで万引きをしてしまった場合の対処法
セルフレジでの万引きについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。
1、増加するセルフレジでの万引き
セルフレジの導入には、店側の人件費削減に大きな効果をもたらすというメリットがある一方で、万引きが増加してしまうというリスクも存在します。
以下では、セルフレジでの万引きが増えている理由を解説します。
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(1)セルフレジの仕組み
小売店では、店員が商品を確認したうえで、会計金額を客に伝えて代金支払いを受けるのが一般的です。
しかし、セルフレジを導入している店舗では、商品の確認から代金支払いまでのすべてを客が自分でおこないます。
スーパーやコンビニ、ドラッグストア、書店といった商品数の多い小売店では、いつ・どの商品が・いくらで・何個売れたのかを記録・集計する「POSシステム」が採用されていますが、セルフレジではPOSレジでの商品登録を客自身がおこなう仕組みです。
表示された合計金額を投入口から支払えば、自動機から釣り銭が払い出されてレシートが発行されます。
また、電子決済を導入している店舗では、決済方法を選択して決済すれば支払いが完了します。
セルフレジは、店員との接触を避けたいという人や、電子決済を活用したいという人を中心に人気が高いです。また、セルフレジを設置している小売店では有人レジよりもセルフレジの方が多く設置されていることもあるため、会計待ちで列に並ぶのを避けたいという人からも、セルフレジは利用されているのです。 -
(2)セルフレジでの万引きが増えている理由
セルフレジでの万引きが増えている最大の原因は、商品の登録から支払いまで客自身で完結させるため、たとえば10点の商品のうち1点だけ登録・支払いを済ませて残り9点の会計をすり抜ける、いわゆる「かご抜け」が簡単にできてしまうという点にあります。
多くの小売店ではセルフレジのコーナーに店員を配置していますが、すべてのレジを監視しているわけではありません。
商品のバーコードをスキャンした「ふり」をして商品を買い物袋やマイバッグなどに収めてしまえば、外見上は正しく買い物をしているように見えてしまいます。
商品を登録する際は正しく読み込みができたときに「ピッ」といった電子音が鳴りますが、素早く連続して商品を登録する合間に無登録のまますり抜けても、買い物客で込み合っている時間帯なら、音が鳴らなかったレジを見分けるのは簡単ではありません。
ほかにも、バーコード部分を指で隠してわざと読み込ませないようにしたり、商品を重ねて登録したりと、さまざまな方法で万引きがおこなわれているのです。
2、セルフレジでの万引きで問われる罪とは?
万引きといえば、代金を支払わずに商品をポケットやバッグなどにしのばせて盗む行為が典型的です。
一方で、セルフレジでの万引きの典型例は「商品の一部を会計しない」という方法です。これは、いくらか代金を支払ってからレジを通過するという点で、一般的な万引きとは手口が異なります。
以下では、セルフレジでの万引きが法律的にはどのような罪に問われるのかについて解説します。
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(1)代金を故意に支払わずに持ち去った場合
セルフレジで故意に商品を登録せず、代金を支払わないまま持ち去った場合は、刑法第235条の「窃盗罪」に問われます。
窃盗罪は、他人の財物を盗んだ者を罰する犯罪です。
小売店で陳列されている商品は、代金が支払われるまではすべて店舗が管理している所有物であるため、代金を支払わずに商品を持ち去れば「窃取した」ことになります。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。 -
(2)精算漏れに気づいたのに代金を支払わなかった場合
セルフレジでは、商品を登録したつもりがバーコードを正確に読み込めなかった、水分などが原因で商品が重なっていることに気づかなかったなど、わざとではなく精算が漏れてしまったといった事態が起こり得ます。
窃盗罪は「商品を盗もう」という故意にもとづく犯罪なので、うっかり精算漏れをしてしまっても処罰されません。
ただし、自宅に帰って商品を仕分けている最中に精算漏れに気づいたのに、その旨を正直に店へと伝えず自分の物にしてしまうと、刑法第254条の「占有離脱物横領罪」に問われるおそれがあります。
占有離脱物横領罪は、占有を離れた他人の物を横領した者を罰する犯罪です。
時間も距離も店から離れてしまった商品は、すでに店舗の占有を離れていると考えられるので、法律上は誰の物でもない状態になります。
簡単にいえば、落とし物を拾ったのと同じなので、勝手に自分の物にすることはできないのです。
占有離脱物横領罪の法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。
わざとでない精算漏れ自体は犯罪ではありませんが、精算漏れに気づいたあとの振る舞いによっては罪に問われるかもしれない点に注意しましょう。
お問い合わせください。
3、なぜバレる? セルフレジでの万引きが発覚するケース
以下では、セルフレジでの万引きが発覚してしまう理由を解説します。
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(1)店員や私服警備員が監視していた
万引きを犯す人の多くは、周囲に店員やほかの買い物客がいないかを確認したり、視点が商品ではなく人に向いていたり、人が少ないコーナーへの移動を繰り返したりするといった、独特な動きをします。
万引きを警戒している店員や私服警備員は万引きをしそうな人の挙動を熟知しているため、「怪しい」と疑われてしまえば、セルフレジを利用している際も注意深く監視されることになるでしょう。
多くの小売店では、「支払うつもりだった」という言い訳によるトラブルを防ぐために、万引きを確認してもすぐに声をかけず、万引き犯が店外へと出たところで声をかけています。
うまくごまかしたつもりでも、店外に出たところでいきなり声をかけられて現行犯逮捕されてしまう可能性があるのです。 -
(2)防犯カメラで監視されていた
スーパーやコンビニなどには、ほぼ必ず防犯カメラが設置されています。
特にセルフレジではコーナーの直上から客の手元を確認できるように設置されていることが多いため、防犯カメラの性能次第ではわざと商品を登録しなかった様子が記録されている可能性があります。
その場では万引きを追及されなくても、POSで管理されていれば商品が登録されていないことが判明するため、被害届が提出されて犯行の後日に逮捕されてしまう場合があるのです。 -
(3)万引き犯の常習犯としてマークされていた
過去にセルフレジでの万引きに成功したことがあっても「バレていない」と考えるべきではありません。
セルフレジはPOSによる商品管理ありきのシステムなので、販売した履歴がないのに在庫数が合わないことは、棚卸しなどの機会を通じて簡単に発覚します。
防犯カメラの記録などと照合すれば万引き犯を特定することも可能です。
そのため、常習犯としてマークされ、再び来店した際は店員や私服警備員の監視を受けて、さらに犯行を重ねたところを現行犯逮捕されてしまう可能性があるのです。
会員カードの履歴などから何月何日の何時に買い物をしたのかをさかのぼり、防犯カメラの記録とセルフレジのPOS情報を照合すれば、過去の犯行も確認できることがあります。
現行犯逮捕をきっかけに、過去の犯行も余罪として追及される事態になるでしょう。
4、セルフレジで万引きをしてしまった! 正しい解決方法
「セルフレジで万引きをしてしまった」、または「うっかり精算漏れをしてしまったが店舗には知らせなかった」といった心当たりがあるなら、自分から積極的に対処することが大切です。
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(1)店側に謝罪して代金を支払う
まだ警察からの呼び出しや逮捕を受けていないなら、店舗の責任者に対して謝罪したうえで、万引きした商品の代金を支払いましょう。
特に、過去に万引きを含め窃盗事件を起こした経歴がない初犯の人や、盗んだ商品の金額が少額である場合には、店舗側が寛大な気持ちで警察への届け出を控えてくれたり、すでに被害届を提出済みでも取り下げてもらえたりする可能性があります。
被害届が取り下げられれば、捜査が終結し逮捕を回避できる可能性が高まります。
万引きは、店舗に陳列している商品を盗む行為です。
つまり、商品代金を支払えば事実上は実害がなくなったことになりますが、実害がなくなったからといって罪を犯した事実が帳消しになるわけではありません。
とはいえ、財産を対象とした犯罪の場合は、実害がなくなることで厳しく処罰する必要性も弱まるという考えもあるので、謝罪・弁済を尽くす姿勢は極めて重要です。
謝罪・弁済を尽くしても、会社の方針やマニュアルなどの制約から、店舗側が被害届を取り下げないというケースもあります。
しかし、真摯(しんし)に反省して責任を尽くす姿勢を示すことは決して無駄にはなりません。
初犯で犯行の態様が悪質ではなく、被害額が少ないうえに謝罪・賠償が尽くされていれば「微罪処分」で済まされる可能性も高まります。
微罪処分とは、事件を警察限りで終結し、検察庁へは微罪処分をしたことを報告するだけで、刑事責任を追及しない制度です。
警察と検察庁に記録が残るだけで刑罰は科せられず、前科もつきません。 -
(2)弁護士にサポートを依頼する
万引きをしてしまった方は、弁護士に相談してください。
特に、過去にも万引きなどの前科・前歴がある場合や、発覚前にもセルフレジでの万引きを繰り返しており被害総額が大きい場合には、弁護士のサポートは欠かせません。
弁護士に相談すれば、逮捕や厳しい刑罰の回避に向けた弁護活動を依頼できます。
また、弁護士が代理人となって店舗側との示談交渉を尽くすことで、被害届の姿勢をかたくなに崩さない店舗が相手でも穏便に解決できる可能性が高まります。
また、被害届の取り下げがかなわず刑事事件に発展した場合でも、店舗側への謝罪と弁済に向けて力を尽くした事実は考慮されます。
真摯に反省している姿勢を弁護士が捜査機関にはたらきかけることで、警察限りで処分が終了したり、検察官が不起訴処分を下すことで刑罰を回避できたりする可能性もあるのです。
5、まとめ
セルフレジでの万引きには、窃盗罪が適用されます。
ただ、セルフレジでは商品の確認・登録や会計をすべて客自身がおこない店員によるチェックがないため、「見られていない」「ごまかしてもバレない」と考える方もいらっしゃいます。しかし、セルフレジを導入している小売店では商品管理が徹底されているうえに、防犯カメラも設置されているため、万引きをすれば発覚する可能性は高いのです。
万引き犯として特定されると、再度来店した際に監視されて現行犯逮捕されたり、証拠がそろって後日逮捕されたりする危険もあります。
また、不注意で精算漏れの商品を持ち帰ってしまった場合も、精算漏れに気づいたのに店舗に伝えず自分の物にすると、占有離脱物横領罪に問われる可能性があります。
逮捕や厳しい刑罰を回避するには、弁護士への相談が不可欠です。
セルフレジで万引きをしてしまったという方は、まずは刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています