ゲーム機の転売は違法とならないのか? 転売に関する規制について解説
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プレイステーション5など非常に人気のあるゲーム機は、発売から一年たった2021年11月にも品薄が続いています。発売日に運よく定価で手に入れることができた人は、新品のまま、「メルカリ」や「ヤフオク」に出品することで購入価格と転売価格との差額を得ることができます。
このような「転売」という行為は「安く買って高く売る」という商売の基本であり、その行為自体は非難されるものではありません。ただ、不当に高く売ったり、本当に欲しい人が買えなかったりという状況を作っているのも事実です。現に、ゲームファンからは、インターネット上で転売行為をおこなう人を「転売ヤー」などと呼んで、このような人たちに対する批判が高まっています。
転売行為には、法律的な問題はないのでしょうか?本コラムでは、転売が違法となる場合について、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。
1、転売に関する規制
転売が社会問題化した背景には、インターネットの普及によるオークションサイトの登場があります。かつては、消費者が商品を購入しても、それを自分で売る手段は、フリーマーケットや質屋くらいしかありませんでした。ところが、インターネットによるオークションサイトの登場により、誰でも簡単に出品ができるようになりました。その結果、「転売」というビジネスが一気に広がりました。
不要品などを必要としている人に譲渡できるという点では、オークションサイトは非常に優れており、リサイクル社会にも寄与するものといえます。しかし、不要品を売却するのではなく、はじめから転売目的で商品を購入して、それを高値で売却するという行為は問題となり得ます。人気のある商品を転売ヤーたちが買い占めることで、一般人が、適正な価格では購入できないという事態が生じるようになったためです。
このような事態を回避するため、一定の規制が求められるようになるわけですが、転売目的なのか不要品の売却なのかは主観の問題であるため、規制することが難しいという事情があります。
そもそも「価格」とは、市場原理によって決まるものです。転売する人が提示する価格で商品が売れるのであれば、その値段が適正というように考えることができます。したがって、それに目をつけて安く購入し、高値で転売することは問題ないと考えることができます。以上の経済学的な考え方が、転売行為が簡単に規制できない理由の一つといえます。
そのため、「転売」という行為そのものは、原則として違法ではないといえるでしょう。
ただし、次のように法律や条例によって転売が規制される場合があります。
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(1)マスクとアルコール消毒液
新型コロナウイルスの感染拡大によりマスクやアルコール消毒液の不足が社会問題になりました。そこで、1973年に制定された「国民生活安定緊急措置法」という法律を適用することで、マスクやアルコール消毒液の取得価格を超える価格での転売行為が禁止されました(マスクやアルコール消毒液に対する転売規制は、2021年11月の時点では解除されています。)。
この法律に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となる可能性があります。 -
(2)チケット
チケットの転売に関しては、「チケット不正転売禁止法」(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)という法律があります。この法律は、2019年6月に施行された法律です。この法律は、興行主の事前の同意を得ずに、反復継続の意思をもって行う有償譲渡であって、興行主等の販売価格を超える価格でチケットを転売すること等を禁止する法律です。また、対象となるチケットは、不特定または多数の者に販売され、かつ、一定の条件に該当する日本国内で行われる芸術・芸能やスポーツイベントなどのチケットです。一定の条件というのは次の3つです。
- ① 興行主等が、販売時に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示し、
- ② 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定され、
- ③ 興行主等が、販売時に、入場資格者又は購入者の氏名及び連絡先を確認する措置を講じ、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示しているもの
この法律に違反した場合、1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります。転売した人だけでなく、不正転売を目的として購入した人も罰せられるので注意が必要です。
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(3)医薬品や医療機器
医薬品や医療機器については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律」という法律があります。医薬品や医療機器を許可なく販売することは禁止されています。
この法律には、違反行為に対して、3年以下の懲役または300万円以下の罰金等の罰則が規定されています。 -
(4)酒類
酒類については、「酒税法」という法律があります。酒類を販売する場合には免許が必要になります。ただ、免許が必要なのは、継続的取引をする場合に限られます。したがって、不要になった酒類をネットオークションに出品するだけなら免許はいりません。
この法律に違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる可能性があります。 -
(5)偽ブランド品
偽物のブランド品を販売等した場合、ブランド品の持つ商標を侵害することになるので、商標法違反となる可能性があります。商標権を侵害した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります。また、偽物を本物と偽って販売した場合には、詐欺罪に該当する場合もあります。詐欺罪の場合、10年以下の懲役になる可能性があります。
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(6)乗車券
交通機関の乗車券については、都道府県の「条例」によって禁止されている場合があります。たとえば、東京都では、迷惑防止条例で「ダフ屋」行為の禁止として乗車券の不当な転売が禁止されています。
【迷惑防止条例第2条第2項(参考)】
何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、もしくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。
2、ゲーム機の転売が違法にあたる場合とは?
ゲーム機は、前述した法律や条令による規制の対象にはなっていないので、転売すること自体は違法ではありません。
ただし、「古物営業法」により規制される場合があるので注意が必要です。
古物営業法とは、古物を営業として売却等をする場合には古物商許可を取らなければならないという旨を定める法律です。
いわゆる「中古」のゲーム機のみならず、一度でも消費者の手に渡った物品は、未使用品であったとしても「古物」に該当する可能性があります。したがって、転売目的で個人が購入した物も「古物」にあたり得ます。
ただ、古物商許可を取る必要があるのは「営業」として売却する場合に限られます。営業というのは、営利を目的として反復継続的に売却行為をおこなうことです。したがって、営利を目的とせずに1回売却するだけであれば、営業とはみなされず、許可を取る必要はありません。
一方で、同じゲーム機を何台も購入して、それをネットオークションなどで取得価格よりも高い値段で転売して利益を得る行為は、営業行為と認定される可能性が高いので、その場合には古物商許可を取る必要があります。
3、古物営業法に違反した場合の罰則とは?
ゲーム機を営利目的で反復継続して販売しているにも関わらず、古物商許可を取っていなかった場合、無許可営業ということになります。
無許可営業をした場合、法定刑は3年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
4、転売行為が違法でないか不安な場合には弁護士に相談
転売を規制する法律や条令はいろいろあるので、どのような物を転売した場合に違法となるのかわからないという場合には弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、法律で規制の対象になっているか否か等について、法的な観点から調査することができます。
また、すでに説明したとおり、規制法がない物についても、営利目的で反復継続して転売している場合には「営業」とみなされて、古物営業法により古物商許可が必要になります。
自分の行為が「営利目的で反復継続している」と判断されるかどうかわからず、不安になる方もおられることかと思います。弁護士であれば、過去の判例を参考にしながら、「営業」に該当するかどうか判断することができます。
心配な方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスにまでご相談ください。
5、まとめ
今回は、転売に関する一般的な規制を紹介し、市場でなかなか手に入らない「プレステーション5」などのゲーム機を転売することは違法なのかについて検討してきました。
原則として転売することは違法ではなく、ゲーム機であれば、古物営業法にいう古物の販売に該当する場合のみ問題になります。
古物営業にあたるかを判断するのは難しいと思いますので、心配な場合には弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 川越オフィスでは、転売行為にあたるかどうかの相談を受け付けております。お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています