夫が大麻所持の疑いで逮捕!? 初犯の場合に科される刑罰は?
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川越市のある埼玉県では、大麻による検挙者数が全薬物事犯者のうち約11%(平成28年)であり、覚せい剤に次いで多くなっています。また、大麻事犯の検挙者の半数が10~20代の若年層であり、大麻は、覚せい剤の乱用に至る入り口(ゲートウェイドラッグ)になると言われています。
もし、あなたの家族が大麻の所持で警察に逮捕されてしまったら……。
逮捕されてしまった本人はもちろん、あなたを含めた家族が今後どうなってしまうのか、いつ家に帰ることができるのか、面会はできるのか、仕事に影響するのかなど、不安に思うのは当然のことです。
そこで今回は、家族が大麻取締法違反で逮捕されたとき、どうすればよいのか、そして、科される可能性がある刑罰について解説します。
1、どのくらいの量刑になる?
大麻取締法において処罰の対象となるのは、主に大麻の所持、売買、栽培、輸出入の4つです。具体的な法定刑について知っておきましょう。
●個人使用目的での大麻の所持・譲り受け渡し
法定刑は5年以下の懲役です。未遂罪についても「罰する」と規定されていることから、たとえ譲り受け渡しが実際に実行されなくても、処罰を受ける可能性があります。
●営利目的での大麻の所持・譲り受け渡し
法定刑は、7年以下の懲役、または情状によって7年以下の懲役および200万円以下の罰金です。営利目的と判断されると、悪質性が高いと評価され、罪が非常に重くなります。個人使用目的の場合と同様、未遂罪も罰するとされています。
2、大麻で逮捕されたあとの流れ
大麻取締法違反で逮捕されると、ほかの刑事事件同様、逮捕から勾留、起訴または不起訴の決定という流れで手続きが進みます。起訴・不起訴の決定まで最長で23日間、あなたの家族は警察の留置場や拘置所での生活を強いられることになるかもしれません。
あなたの家族が逮捕されたとき、どのような手続きがとられることになるのかについて、知っておきましょう。
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(1)逮捕からはじまる面会制限期間
まず、逮捕されると、被疑者として身柄が拘束されます。警察は、被疑者の取調べなどから、検察官へ送致するかどうかを48時間以内に判断することになります。
検察官へ送致されると、再び取調べが行われます。検察官は24時間以内に、引き続き身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」の必要があるかどうかを判断します。必要と判断すると、検察官は裁判官へ勾留請求を行います。
刑事手続上、証拠隠滅などを防ぐ目的で、逮捕から勾留が決まるまでの最長72時間は、たとえ家族であっても、通常は、逮捕された本人との面会が制限されます。自由な接見を行えるのは、依頼を受けた弁護士のみに限られます。 -
(2)勾留から起訴に至るまで
勾留が裁判所から認められると、原則10日間、最長20日間もの間、引き続きあなたの家族の身柄は拘束されます。薬物事件には、証拠隠滅などを防ぐため、勾留となる可能性が非常に高いという特徴があります。また、鑑定に時間がかかるため、勾留が長期に及ぶケースが多いです。
また、勾留中は、原則として面会が可能となるのですが、薬物事件の場合は、薬物仲間との接触により証拠隠滅を行う可能性があると懸念され、勾留中も家族や友人等との面会を禁止する処分を受けることがあります。
検察官は、勾留期間中に捜査を進め、起訴か不起訴を決定します。起訴とは、検察官が、刑事事件についての審判を裁判所に求めることを指します。大麻の単純所持、譲り受け渡し罪には罰金刑の設定がないため、起訴されるとなると、公開された裁判で罪を裁かれる「公判」が請求されることになります。
もし、検察官が「不起訴」と判断すれば、あなたの家族は釈放されます。自宅に帰ることはもちろん、これまでどおりの生活に戻ることができます。罪を裁かれることもないため、前科もつきません。 -
(3)保釈と判決
勾留から公判請求に至ると、原則、刑事裁判が終わるまで身柄の拘束が継続されることになります。つまり、継続して拘置所や留置場で生活することになってしまうのです。
しかし、起訴されたあとに保釈を請求し、裁判所からの許可が出た場合、保釈金を納付すれば、自宅に帰ることができます。もちろん、完全に自由となったわけではなく、裁判に出席する必要がありますし、旅行や転居などを制限されます。保釈金は判決が出たあとに返還されます。
裁判は、犯行が明らかで本人も罪を認めているときは、1回で終わることも多いです。罪を争ったり、そのほかの罪にも問われたりしているときは、長期化する傾向があります。判決が下されると、刑事事件として裁かれる過程は終了します。
もし、執行猶予つきの判決が言い渡されたら、直ちに刑務所へ収容されることはありません。たとえば「懲役1年、執行猶予3年」の判決を言い渡された場合は、社会に戻り、3年間、一切の罪を犯すことなく生活すれば、刑務所に行かなくて済むということです。ただし、再度罪を犯したときは、量刑が重くなるということを忘れないようにしましょう。
3、弁護士の役割と家族ができること
家族の存在は、罪を犯してしまった人にとって非常に大きな心の支えとなります。しかし、逮捕されてからのさまざまな事態への対応を個人で行うことは、非常に難しいものです。家族にとって大きな負担となってしまうでしょう。
逮捕された本人やその家族をサポートすることが弁護士の仕事です。弁護士に依頼することによって、必要な弁護活動が行われ、処罰を最小限に抑えることができます。また、その後の生活面でもアドバイスを受けることができるでしょう。
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(1)弁護士の役割
大麻の所持、売買、栽培、輸出入は確かに法で禁じられた行為です。しかし、弁護士の活動によって、長期にわたる身柄拘束を回避したり、その後の社会復帰をスムーズに果たしたりできる可能性があります。
もし家族が逮捕されてしまったら、とにかくすぐに弁護士に相談してください。接見が制限されている期間中であっても、本人との接見を行えますし、今後の見通しを立てることができます。
依頼を受けた弁護士は、本人との接見を通じて、本人と家族や職場との橋渡しをしたり、反省を促したり、取調べへの対応方法など多岐にわたるアドバイスを行ったりします。また、身柄拘束が長期に及ばないよう、警察や検察に働きかけます。その際、本人に今後の捜査への協力や決して再犯しないことを誓約させたり、家族が今後本人を監督することを約束することなどが重要です。 -
(2)職場やその後の生活についてできること
家族が逮捕され、勾留が決定してしまうと、起訴か不起訴化かが決定するまでだけで最長23日間も身柄の拘束を受けることになります。起訴となれば、保釈が認められない限り、裁判が終わるまで帰宅することはできません。当然、仕事や学校へ行くこともできないということになります。
家族としては、職場に、どの段階でどのように伝えるかは大変難しいところでしょう。すぐに釈放されれば、病欠や有休といえば済むかもしれません。しかし、勾留が長引く場合には、職場に事実を伝えなければ、逆に、懲戒解雇などの処分を受けてしまうこともあり得るでしょう。
弁護士は、警察や検察官、裁判所に対して弁護活動を行うだけでなく、職場で不当な扱いを受けないよう、職場との交渉を行うこともあります。仕事を確保することは、刑事処分にとっても非常に重要です。弁護士であれば、刑事事件の見通しなど法的な観点を踏まえ、本人が不利益な扱いを受けないよう職場に働きかけることができます。
家族しかできないことといえば、「本人に寄り添いながら、再び大麻に手を染めない環境をつくること」が挙げられます。たとえ執行猶予付き判決が出ても、執行猶予期間中に再び大麻に手を染めれば、今度は実刑を免れることは難しくなるでしょう。本人の人生への悪影響も大きくなると考えられます。
弁護士は、薬物依存治療の専門家を紹介するなど、再び罪を犯さないためのアドバイスも行います。刑事手続後の生活や治療についても、まずは弁護士に相談してみてください。
4、まとめ
大麻は覚せい剤に次いで多く使用される薬物です。覚せい剤と同様再犯が非常に多く、若者に広まっている点が特徴です。初犯の場合、仮に有罪になっても執行猶予がつくことがほとんどですが、本人や家族への影響は大きく、繰り返し罪を犯せば本人や家族の人生が大きく狂ってしまうおそれがあります。
大麻には当然手を出すべきではありません。しかし、万が一のときには、あなたひとりが何とかしようとがんばったとしても、最善の解決を導くことは非常に難しいものです。是非弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士は力を尽くします。家族が大麻取締法違反で逮捕されてしまったときは、なるべく早急に相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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