解雇予告を口頭で受けたらどうする? 川越オフィスの弁護士がわかりやすく解説

2024年11月18日
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解雇予告を口頭で受けたらどうする? 川越オフィスの弁護士がわかりやすく解説

令和5年に埼玉県森林組合連合会による元業務部長の懲戒解雇を不当解雇であるとした判決がありました。さいたま地裁は、懲戒処分事由自体は認めながらも、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であるとは認められないとして、解雇が無効であると判断しています。
この判決は、解雇がいかに認められにくいか、逆に労働者側からすれば、不当解雇を訴える意味があることを示していると言えるでしょう。

口頭で解雇予告を受けた場合、どのように対応するのがよいのでしょうか。
解雇予告を受けた場合、解雇はそう簡単には認められないはずであるという点も踏まえ、適切に対応する必要があります。

本記事では、解雇予告があった場合の対処について、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。


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1、解雇予告とは

会社が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に解雇の予告をしなければならないというルールがあります。労働基準法20条1項では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。」と定めています。
それでは、そもそも解雇予告がない場合(即日解雇)や、解雇予告があっても解雇の日が通知日から30日未満の日に設定されている場合、解雇は無効になるのでしょうか。

労働基準法20条1項では、「三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と定めており、解雇予告がなくても30日分の給料を支払えば有効に解雇することができる可能性があります。

また、労働基準法第20条第2項では、「予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。」と定めているため、解雇の日が30日未満の日に設定されていても解雇は必ずしも無効にはなりません。
30日に満たない日数分の1日あたりの平均賃金を支払えば、解雇予告期間を設けないことで解雇が違法になるということはなくなります。

2、口頭で解雇予告された場合に確認すべき3つのこと

口頭で解雇予告をされた場合は、まずは次の3つのポイントを確認しましょう。

  1. (1)退職勧奨ではないのか

    会社から退職するよう求められたとき、それはいわゆる解雇の予告ではなく、自主退職を促すための退職勧奨ではないのかを確認しましょう。
    明確な解雇事由に相当するものがないが、何とか労働者を退職させるべく自主退職を促すために退職勧奨をする場合もあるためです。
    この場合は正当な解雇事由がないため、労働者側が退職を望まないのであれば、あくまでも拒否する姿勢で臨みましょう。

  2. (2)書面による解雇の理由

    退職勧奨ではなく解雇の予告であることがはっきりした場合、次に解雇理由や根拠の正当性を確認するために解雇通知書、解雇理由証明書などの書面を請求しましょう。
    解雇理由が明らかに不当であれば解雇の有効性を争うことも検討できますし、解雇理由を明らかにし自己都合退職ではないことを明確にしておくことで、失業保険を早期に受給できます。
    失業保険の給付開始日は、会社都合退職の場合は7日後、自己都合退職の場合は7日+2か月後と2か月の違いがあります。

  3. (3)解雇予告手続きの妥当性

    解雇の予告である場合、解雇の予告期間は十分か確認します。
    予告期間が不十分な場合、解雇予告手当が適切に支払われるかを確認し、予告期間が十分でない場合は予告手当を請求しましょう。

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3、会社が労働者を解雇するための条件

労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定め、会社が労働者を解雇できる場合を限定することにより労働者の保護を図っています。
解雇には次の3つがあり、有効性の判断の仕方が異なります。

  1. (1)整理解雇

    整理解雇とは、経営不振等を理由に人員を削減する場合の解雇をいい、判例で、次の4つの要素により解雇の有効性が判断されます。

    • 人員削減の必要性:経営危機の存否、売上の推移等から判断して人員削減の必要性が認められること。
    • 整理解雇の回避努力:解雇以外の方法により経営改善を図ったが、それでも解雇が必要になったこと。
    • 人選の合理性:公平かつ客観的基準による人選であること。
    • 手続きの相当性:労働者や労働組合との手続き(説明、協議、同意など)が適切であること。
  2. (2)懲戒解雇

    就業規則に定められる懲戒事由があった場合に、労働者に対する制裁として行われる解雇を懲戒解雇といいます。懲戒処分の中でももっとも重い処分であり、労働者の不利益が大きいため、客観的合理性や社会的相当性の有無の判断が厳格になされます。

  3. (3)普通解雇

    整理解雇、懲戒解雇以外の解雇一般を普通解雇といいます。普通解雇の場合も、就業規則に定められた解雇理由にあたることが必要で、そのうえで解雇に客観的合理性や社会的相当性があるといえるかを検討することになります。

    具体的に解雇が有効とされる可能性がある場合として、専門的な能力があることを前提として採用されたにもかかわらずそのような能力を明らかに有しないことが判明した場合や、遅刻や欠勤が常識的に考えて許されるレベルを超えている場合で、かつ、改善がみられない場合などがあります。

4、解雇を受け入れる場合の対処法と注意すべきこと

解雇を受け入れる場合、30日以上の予告期間をもって解雇予告がされたか確認し、予告期間が足りなければその分の解雇予告手当を請求します。解雇予告手当を請求しても対応してもらえない場合や、請求方法がわからない場合には、弁護士へ相談するとよいでしょう。
なお、30日以上の予告期間をもって解雇予告がされた場合のほかに、次の場合にも解雇予告手当が請求できないという例外があります。

●労働基準法21条
解雇の予告に関する規定が適用されない労働者として次の労働者を定めています。

  • 日日雇い入れられる者(いわゆる日雇い労働者)
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
  • 試の使用期間中の者


●労働基準法20条1項
①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、②労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、解雇予告手当は支払わなくてよいと定めています。
たとえば、大地震などが原因でやむを得ず従業員を解雇する場合や、労働者による重大な犯罪行為があったことによる解雇のような場合です。

5、解雇の有効性を争う場合の対処法と相談先

すでに述べた通り、労働契約法は解雇を制限し、過去の裁判例上も解雇の有効性については厳格に判断され、裁判でも解雇無効の判断は多くなされています。
このような点を踏まえ、解雇の有効性を争う場合、次のような対応をとることが必要になります。

  1. (1)退職合意書などへのサインをしない

    会社は、労働者を、退職に合意した合意退職者として扱うべく、退職合意書その他の書類へのサインを求めることがあります。
    会社としては、このようなサイン済みの書類があれば、そもそも解雇とはならず、本人による自主退職扱いとなるため、不当解雇などの問題を回避できます。
    このような書面にサインをすると、退職に合意したという証拠を自ら作り出すことになってしまうため、解雇の有効性を争いたい場合には、このような書類には絶対にサインをしてはいけません。

  2. (2)解雇が無効であることの証拠収集

    解雇の有効性を争うにあたっては、解雇が不当なものであることを主張する必要があります。その主張を明確なものにするために必要になるのが証拠です。
    必要な証拠は解雇理由に関係します。つまり、会社側が主張する解雇理由が不当であり、解雇事由には該当しないことを示せる証拠を準備することになります。

    たとえば、能力不足との理由で解雇を予告されたが、解雇されるほどの能力不足はないと考える場合には、これまでの仕事内容(営業成績、作成資料、会議議事録、メール履歴など)や業務評価、上司との会話記録などを準備し、解雇が相当と言えるほどの能力不足があるとは言えないことを示すことになります。
    そのほかに、就業規則や労働契約書、勤務時間記録など基本的な就業状況に関する記録もあわせて用意するとよいでしょう。

  3. (3)解雇予告された場合の相談先

    解雇予告された場合の相談先は、次のようなものがあります。

    • 労働組合
    • 労働基準監督署
    • 弁護士/社労士


    会社から解雇を言い渡され、正当な解雇理由があるとは思えないために対応しないままにしていると、より解決に時間がかかってしまうおそれがあります。解雇予告された場合、まずは上記のような相談機関に相談することを検討しましょう。
    ただし、解雇通知書や解雇理由証明書は、速やかに取得しておいた方が後々対策を講じやすいため、解雇を言い渡された時点ですぐにご自身で請求することが大切になります。

6、まとめ

解雇予告を受けた場合、解雇は容易には認められないはずであるという知識を持ったうえで、適切な対応をとることが必要です。
ご自身で証拠収集などはできるとしても、最終的に会社と交渉することはやはり抵抗があると感じる方も多いでしょう。
そのようなときは、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスまでお気軽にご相談ください。川越オフィスの弁護士が、お話を伺ったうえで解決のために尽力します。

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