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従業員が起こした仕事中の事故は会社の責任になるのか

2023年08月03日
  • 労働問題
  • 仕事中の事故
  • 会社の責任
従業員が起こした仕事中の事故は会社の責任になるのか

令和3年の川越市では、1041件の人身事故と7424件の物損事故が発生しました。

従業員が交通事故を起こしてしまうことは、経営者や従業員がどれほど注意をしていても生じてしまう可能性のある事態です。

本コラムでは、仕事中に起こった事故で会社が問われる責任や、会社が責任を負うケースと負わないケースとの違いについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、仕事中の事故で問われる会社の責任

まず、従業員が仕事中に交通事故を起こしてしまった場合に、従業員と会社がそれぞれどのような責任を負うかについて解説します。

  1. (1)従業員の責任

    たとえば、営業のため会社の自動車を運転していた従業員が、よそ見をしていて歩行者に衝突して、歩行者にケガをさせたり、歩行者の持っていた携帯電話などの携行品を破損させたりしたという事態について想定してみましょう。

    基本的に、従業員が仕事中に不注意などによって交通事故を起こした場合には、従業員は被害者に対して損害賠償責任を負うことになります
    具体的には、ケガの治療費や慰謝料(交通事故によって生じた精神的苦痛を金銭に換算したもの)といった人身損害や、携帯電話の修理費用などの物的損害を賠償する責任が生じるのです。
    仕事中の事故だからといって、従業員自身が被害者に負う責任は、仕事中以外の事故と基本的には変わりません。

    法的な根拠としては、以下のようになります。

    1. ① 民法上の不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)
    2. ② 自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づく責任(自賠法3条)


    ただし、②の自賠法に基づく責任は、被害者の人身損害に関する部分のみであり、物的損害については①の不法行為責任のみを負うことになります。

    ②の自賠法に基づく場合には、立証責任の転換がされており、通常の損害賠償請求権を行使する場合とは異なり、被害者が従業員に過失があったことを立証する必要はなく、従業員が、自身に過失がなかったこと(注意を怠らなかったこと)などを立証しなくてはならないことになっています。
    そのため被害者側としては、人身損害については、②の自賠法に基づく責任を追及するほうが、立証責任の点では有利となります。
    したがって、被害者は、人身損害に関しては、従業員に対して、自賠法に基づいて請求をすることが一般的です。

    しかし、被害者側が、従業員だけではなく、会社に対しても責任を追及してくるケースも、多々あります

  2. (2)会社の責任

    会社は、従業員が仕事中に起こした事故について、以下の法律に基づき、従業員と連帯して責任を負う可能性があります。

    1. ① 民法上の使用者責任(民法715条)
    2. ② 自賠法上の運行供用者責任(自賠法3条)


    ① 使用者責任(民法715条)
    使用者責任とは、事業のために他人を使用する者(会社)は、従業員がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うというものです。
    自賠法に基づく責任と同じく、使用者責任についても、被害者救済の見地から過失の立証責任が転換されています
    したがって、被害者としては、会社自身の過失を立証しなくても、会社側の使用者責任に基づく賠償を請求することができます。
    ただし、従業員自身の過失は必要になります。

    ② 運行供用者責任(自賠法3条)
    運行供用者責任とは、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者=会社)は、人身損害について、賠償する責任を負う、というものです。
    使用者責任と同じく、過失の立証責任が転換されており、被害者としては、会社自身の過失を立証しなくても請求することができます

    運行供用者責任は、運行支配および運行利益が運行供用者に帰属することから認められる責任です。
    「運行支配」とは、自動車の運行という危険性があるものを支配していることによる責任(危険責任)です。
    また、運行利益については、自動車を運行することによる利益を受ける者が責任も負担する(報償責任)という考え方になります。
    冒頭に想定した事例では、従業員の仕事中の事故であり、治療費などの人身損害については、使用者責任も運行供用者責任も認められ、携帯電話などの携行品の物損は、使用者責任によって、会社は従業員と連帯して賠償責任を負うことになります。

2、会社が責任を負うケース、負わないケース

以下では、自動車の名義が従業員であった場合や、会社名義の自動車が業務外で使用されていた場合などにおいても、会社が責任を負うのかどうかについて解説します。

  1. (1)基本的な考え方

    使用者責任(民法715条)については民法の条文上会社の「事業の執行について」といえるかどうかがポイントとなり、運行供用者責任(自賠法3条)では「自己のために自動車を運行の用に供」していたかどうかがポイントになります

    これまでの裁判例では、会社が従業員の運行を支配していたかどうか、加害行為が会社の支配領域内の危険に由来するかどうか(危険責任)、自動車運行の利益を受けているかどうか(報償責任)といった観点から、個別的に判断されています。

  2. (2)従業員名義の自動車の運転中に起きた事故

    これまでの裁判例からすると、従業員が自分で所有している自動車を使用することについて、基本的には会社が関与していないとみなされるので、事故が起きた場合、会社側の責任は原則として否定されます。
    しかし、従業員名義の自動車が日常的に業務に利用されており、会社もこれを容認していたような事情がある場合には、責任が肯定される傾向にあります

    具体的には、以下のような要素を考慮して判断されます。

    1. ① マイカーの業務使用に対する会社の認識の有無・程度
    2. ② マイカー通勤に対する使用者の便宜供与の有無・程度(ガソリン代の負担や駐車場の提供など)
    3. ③ 他の通勤手段の有無(公共交通機関の利用が困難か容易か)


    たとえば、最高裁昭和52年12月22日判決では、従業員が自己所有の単車を運転して帰宅途中に事故を起こした事案について、会社の業務に当該単車を使用することを会社が普段から承認しており、手当も支給されていて、事故当日も会社からの指示に従って自宅か現場に出勤したなどの事情がある場合には、会社に運行支配・運行利益があるとして、会社の運行供用者の責任を認めています。

  3. (3)業務外に会社名義の自動車の運転中に起きた事故

    業務中に発生した事故であれば、当然に会社も責任を負うことになります。
    しかし、従業員が私用のために会社名義の自動車を運転していたときに事故が発生する、という場合もあります。
    このような場合については、従業員が会社に無断で自動車を私用で使っていたのか、それとも従業員が自動車を私用で使うことを会社側が容認または黙認していたかなどの具体的な事情によって判断されることになります

    たとえば、最高裁昭和39年2月11日判決では、農業協同組合の運転手が、私用のため組合所有の自動車を無断で運行した際に事故を起こした事案について、組合は自動車を無断で使用することを禁じていたものの、鍵の管理は厳格ではなかったことや勤務時間外の無断使用に特段の措置を講じなかったこと、日常の自動車の運転状況や自動車の管理状況などを考慮したうえで、農業協同組合の責任を認めました。

3、従業員に損害を賠償させる方法

大半の場合において、従業員が仕事中に事故を起こしたら、従業員と会社は連帯して責任を負います。
被害者側として、損害賠償の請求について、以下のような選択肢を持つことになります。

  1. ① 会社だけに請求する
  2. ② 従業員だけに請求する
  3. ③ 会社と従業員の両方に請求する


会社側としては、「従業員に損害を賠償させたい。」と思っているケースでも、被害者側としては会社だけに請求することも可能です。

しかし、会社が、被害者から請求を受けたため、損害賠償金を被害者に支払った場合、会社は、原則として、損害を賠償した額を従業員に請求することが可能です。
このような請求のことを「求償」といいます。
ただし、基本的に、会社は、従業員を使用することで利益を得ているため、信義則上、被害者に対して支払った全額の求償は認められず、制限されることになります

会社側としては、従業員に対して求償を行うかどうか、行うとしてどのように対応すべきか、といった悩ましい問題が生じることになります。
もし、従業員が、仕事中に事故を起こしてしまったら、従業員との間でトラブルとなる前に、弁護士にご相談ください。

4、まとめ

従業員が、仕事中に自動車を使う必要がある業務であれば、どうしても事故が生じてしまうことはあり得るものです。
したがって、会社としては、事故が起きてしまった場合の対応方針をあらかじめ定めておく必要があります。

ベリーベスト法律事務所では、ニーズにあわせて柔軟に、月額費用を抑えて利用できる顧問弁護士サービスを提供しています
普段からとトラブルに対する方針や就業規則などの見直しができるほか、もし事故が起きてしまった場合にも、顧問弁護士が速やかに対応いたします。
業務の一環として従業員に自動車を使用させている企業の経営者は、ぜひ、顧問弁護士サービスの利用をご検討ください。
また、顧問弁護士サービスを利用されていない場合にも、個別の案件に応じて法律相談やトラブル対応を行います。
もし、従業員が、仕事中に事故を起こしてしまった場合には、深刻なトラブルに発展する前に、速やかにベリーベスト法律事務所までご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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