交際相手にもらった独身証明書が偽造だったとき、どうすればいい?

2023年10月31日
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交際相手にもらった独身証明書が偽造だったとき、どうすればいい?

令和3年埼玉県統計年鑑の家事審判および調停事件の主な事件の種類別受件数によると、「離婚その他男女関係解消に基づく慰謝料」の家事調停事件の事件数は16でした。

もし、交際相手が既婚者であり見せてもらった独身証明書も偽造だった場合には、慰謝料を請求したいと思う方もいらっしゃるでしょう。反対に、不倫に加担したとして、交際相手の配偶者から慰謝料を請求されるおそれもあります。

本コラムでは、独身証明書の概要や偽造が可能であるかどうか、交際相手が既婚者だったときの慰謝料に関する対応などについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、「独身証明書」とはなにか

「独身証明書」とは、ある人が未婚であることを証明する公的な書類のことを指します。
結婚相談所やオンラインマッチングサービスなどへの登録や、お見合いパーティーに参加する際に、未婚であることを明確に示すために使われます。

また、似たような書類として、婚姻要件具備証明書と呼ばれるものもあります。
これは結婚をするために必要となる証明書です。
また、婚姻要件具備証明書は自国(提出先の国)の法律によって指定されている結婚のための条件を満たしていることを証明する書類です。
そのため、海外での結婚手続や養子縁組、または外国人が日本で結婚する際など、特定の事情で法的な独身状態を明示する必要が生じた場合に用いられます。

  1. (1)独身証明書の取得方法

    独身証明書を取得するためには本籍地の市区町村役所に直接訪れ、窓口で必要な手続きを行う必要があります。
    その際には、免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書、印鑑が必要です。
    また、本籍地と異なる場所に住んでいる場合や、忙しくて役所に行けない場合には、郵送や代理人に依頼して取得することもできます。
    その場合には、独身証明申請書の作成や、本人が記載した委任状(代理人の本人確認書類)、返信用封筒の準備などを用意しなければなりません。

    ただし、役所によって対応や必要書類が異なる場合があります
    独身証明書を郵送で取り寄せたい場合や代理人に依頼したい場合は、必ずホームページや電話などで確認してください。
    なお、証明書のコンビニ交付サービスでは独身証明書は取得できません。

  2. (2)独身証明書は戸籍証明書で代用できるのか?

    独身証明書と戸籍証明書は異なる書類です。
    しかし、戸籍証明書にも、その人が未婚かどうかが記載されています。
    したがって、戸籍証明書を提出することでも、「独身である」ということを証明することは可能です。

    ただし、戸籍証明書には本人の親族など、プライバシーに関わる情報も詳しく記載されています。
    そのため、提出先や手続き内容によっては、戸籍証明書ではなく独身証明書を求められる場合もあります。
    独身証明書はあくまで独身であることだけを証明するものであることから、プライバシーを保護するという意味でも重要な役割を果たす書類なのです

2、独身証明書は偽造されることがある?

独身証明書の偽造が行われるひとつの事例として、既婚者が不倫をするために独身と偽るケースが見受けられます。
その手段として、ネットなどによる独身証明書の偽造サービスが利用されることがあります。

このようなサービスは一見、合法的な手続きによって独身証明書を提供できる宣伝しているものの、実際は公的な機関から発行されるものではありません。
つまり、公には認められない非合法な手段を用いていると言えます。

また、独身証明書を偽造する行為は、法により厳しく禁じられています
独身証明書は、市区町村が発行する公的な文書であるため、偽造することは公文書偽造等罪に該当する可能性があります。

もし相手が独身証明書を偽造しているとわかった場合や、偽造が疑われる場合には、弁護士に相談することも検討してください。

3、交際相手が既婚者だったときの慰謝料に関する対応

以下では、交際相手が既婚者だったときに慰謝料を請求するための対応や、逆に相手の配偶者から慰謝料を請求された際に取るべき対応を解説します。

  1. (1)交際相手に対して慰謝料を請求する方法

    独身証明書の偽造により、交際相手が既婚者だと知らぬまま関係を持つことになった場合には、精神的苦痛に対する「慰謝料」を請求することができます。

    慰謝料を請求する流れとしては、まずは「証拠」を確保することが大切です
    相手が結婚している証拠や、独身証明書が偽造である証明を集めます。
    次に、被害の程度に応じた適切な慰謝料の金額を設定します。
    その後は、慰謝料請求について記載した通知書を交際相手に送付したうえで、金額について合意を成立されるための示談交渉も行いましょう。

    証拠の収集や適切な金額の設定、示談交渉などは、法律の専門知識も持ち経験も豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

  2. (2)交際相手の配偶者から慰謝料を請求された場合の対応

    もし交際相手が既婚者であった場合には、相手には配偶者がいるために「不倫」を行っていたことになります。
    そして、不倫をされた人は、自分の配偶者(この場合は独身証明書を偽造していた人)に対してだけでなくその不倫相手にも慰謝料を請求することができるのです。
    したがって、交際相手の配偶者から慰謝料を請求されるおそれがあります。
    もし相手から慰謝料を請求された場合は、落ち着いて対応することが大切です。
    とくに弁護士名義で請求が来た場合には、こちらも速やかに弁護士に相談したほうがいいでしょう

    なお、偽造の独身証明書を提出されて、それに気付くことなく関係を続けていた場合は、本人としては不倫に加担しているという自覚がないため、慰謝料を支払う必要がない可能性もあります。
    ただし、交際相手の配偶者に納得してもらったり、訴訟まで事態が進んだ際に裁判所に適切な判断をしてもらったりするためには、「相手が既婚者であることに気付いていなかった」という事実を、客観的に説得力のあるかたちで証明する必要があります。
    このような場合にも、やはり、専門家である弁護士にできるだけ早く相談することが大切です。

4、交際相手が既婚者だった場合は弁護士に相談

最後に、交際相手が独身証明書を偽造していた場合などの離婚や男女問題のトラブルを解決するうえで、弁護士に相談したほうがよいメリットをまとめます。

  1. (1)証拠を集める際にサポートしてくれる

    独身証明書の偽造を巡るトラブルに巻き込まれた際、専門知識や経験を持たない個人がひとりで証拠を収集することは困難です。

    弁護士に相談すれば、証拠の種類や集め方、提示の仕方などについて提案を得ることができます。
    また、客観的かつ正確な証拠を適切に収集する方法も得られるでしょう。

    証拠が不十分な場合や、相手方が証拠を隠滅しようとしている場合など、探偵や調査会社の力を借りることで、より強固な証拠を得ることができます。
    弁護士は、信頼できる探偵や調査会社を紹介することも可能です

  2. (2)交際相手との交渉を任せられる

    弁護士に相談するメリットのひとつとして、交際相手との面倒な交渉を専門家に任せられるという点が挙げられます。
    たとえば、慰謝料の請求額を決めたり、慰謝料請求に関する詳しい説明を交際相手に伝えたりするためには、専門的な知識とともに交渉に関する能力も必要になってきます

    弁護士に依頼すれば、これらの交渉を代行してもらうことができます。

    また、裁判になった際の訴訟手続きや、既婚者の配偶者からの慰謝料請求への対策などが必要になった際にも、弁護士は法的手続きをサポートいたします。
    事態が深刻化しそうな場合には、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

  3. (3)慰謝料請求以外に提示したほうがよい条件などを相談できる

    慰謝料だけではなく、そのほかの提示すべき条件についても弁護士に相談することが重要です。
    たとえば、交際の事実や証拠の公表についての合意、今後の交際についての約束など、交際相手との関係性によって必要となる条件はさまざまです

    ご自身ではそもそも思い浮かばないような条件が必要である場合もあるため、交際相手との関係性や自身の置かれた状況について、できるだけ具体的に弁護士に伝えて判断してもらいましょう。

5、まとめ

本コラムででは、独身証明書の概要や独身証明書の偽造について、交際相手が既婚者だったときの慰謝料に関する対応を解説しました。

独身証明書を偽造することは公文書偽造等罪という犯罪に該当しうるため、発覚した際には早めに弁護士に相談してください。
また、交際相手に対して慰謝料を請求する場合や、逆に相手の配偶者から慰謝料を請求された場合にも、専門家である弁護士の判断を得ることが重要になります。

離婚や男女問題に関する法律的なお悩みを抱えられている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています