離婚時の財産分与で税金を払う必要はある? 具体的事例と税額計算

2021年06月01日
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離婚時の財産分与で税金を払う必要はある? 具体的事例と税額計算

川越市の発表によると、平成30年の川越市の離婚率は1日あたり1.5組でした。毎日2組近い夫婦が離婚していることから、非常に多くの方が離婚の悩みを抱えていることがわかります。

離婚することになった場合、財産分与は避けて通ることのできない手続です。離婚に伴う財産分与には、税金がかからないことが原則です。しかし、例外として課税されるケースがあるため注意が必要です。

ここではベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が、財産分与で税金がかかってしまうケースや計算方法、そして節税方法を解説します。

1、財産分与で得た財産は非課税?

原則として、離婚時に得た財産は非課税です。但し、いくつかの例外が存在します。

  1. (1)贈与税の原則と例外

    財産分与は、夫婦の共有財産を分割する手続です。「贈与」とは異なるため、贈与税の課税対象とはなりません。しかし、分与の金額が大きすぎると課税される可能性があります。また、贈与税の負担を回避する目的で離婚を選択するなど、悪質性が認められる場合にも贈与税の課税対象になり得ます

    贈与税の計算式は以下のとおりです。

    「(贈与額-110万円)×税率-控除額=贈与税」


    贈与税は一律110万円の控除額が定められているのに加え、贈与額に応じた控除額が決められています。税率は贈与額によって変動し、最大で55%になります。

  2. (2)不動産取得税の原則と例外

    財産分与の際に、住んでいた家や土地を譲り受けても不動産取得税はかかりません。しかし、共有財産の清算という財産分与の趣旨を越えた、高額な分与となる場合、不動産取得税の課税対象になる可能性があります。

    不動産取得税は、土地、住宅の場合は「不動産価格×3%(居住用以外の不動産は4%)」です。不動産価格は、固定資産課税台帳に記載されている価格で、毎年送られてくる納税通知書にも記載されています。

  3. (3)その他

    所有権移転の登記を行えば、登録免許税を納める必要があります。税率は、不動産価格の2%です。

    また、不動産の所有者となった場合、毎年1月1日時点で課税される「固定資産税」も支払わなければなりません。

2、財産を譲り渡す側にも税金がかかる

財産は、受け取った側だけでなく譲り渡した場合も税金を支払わなければならない可能性があります。それが「譲渡所得税」です。

  1. (1)譲渡所得税とは?

    金銭や不動産などを譲渡することで得られた所得は、譲渡所得といいます。

    たとえば、1000万円で購入した土地が2000万円で売却されたとすると、1000万円のプラスになっています。この「利益」の部分を譲渡所得といい、譲渡所得税の課税対象となります

    譲渡所得税は、売却した場合だけでなく、無償で譲渡した場合も生じ得る税金です。財産分与においては、対象の不動産の価格が購入時よりも上がっていなければ課税対象にならないので、ご安心ください。

  2. (2)対象となる財産は?

    すべての資産が譲渡所得税の課税対象となるわけではありません。

    現金や銀行預金などの流動資産は、対象外となります。それに対して土地、建物などといった不動産、そのほか宝石類、骨董(こっとう)品、株式などが課税対象となります。

3、節税の方法

財産分与の際に納める税金を節税する方法を説明します。どの制度も自動的に適用されるわけではなく、自分で確定申告を行う必要があります。忘れずに手続きを行いましょう。税理士を依頼することもひとつの手です。

● 住宅譲渡の特別控除を受ける
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」というものがあり、一定の要件を満たす住居を譲渡する場合は、3000万円を上限として特別控除を受けることが可能です(租税特別措置法35条)。

これは、離婚に伴う財産分与を行う場合にもあてはまります。ただし夫婦、親子といった間柄では特別控除が適用されないことに気を付けなければなりません(租税特別措置法施行令23条2項、20条の3)。つまり離婚が成立していない段階で住宅を譲渡すると特例の適用ができないということになります

● 現金での財産分与
不動産の登録免許税や固定資産税を節税したい場合は、不動産を売却してから譲渡するとよいでしょう。ただし、不動価格が上昇している場合は、売却した際に譲渡所得が発生しますので、課税対象になります

● 配偶者控除の活用
20年以上の結婚期間がある夫婦の場合、マイホームを配偶者に贈与すると2000万円の控除を受けることができます。さらに、110万円の基礎控除があるため2110万円であれば非課税になります。

マイホームの評価額が高額の場合は、離婚前に配偶者控除の範囲内で譲渡し、残りを離婚後に譲渡すると、配偶者控除と特別控除の節税効果を最大限受けることができます。

4、離婚で財産分与を行ったら書面に残しておく!

  1. (1)離婚協議書を作成するメリット

    財産分与について夫婦で合意できたら、離婚協議書に残しましょう。
    離婚協議書を作成するメリットは、合意の内容を正確に記録できる点です。せっかく合意したと思っても、思い違いがあったり内容を忘れてしまったりすることは多々あります。あとから「そんな約束はしていない」などと言われないように、書面に残しておくのです

  2. (2)公正証書ならさらに強い法的効力がある

    離婚協議書は公正証書にしておくことをおすすめします。公正証書とは、公証人が作成する公的な書類です。

    本来、強制執行をするためには、個々で訴訟を起こさなければいけません。そこで、離婚協議書を、「直ちに強制執行に服する旨の陳述」(強制執行認諾文言)を入れた公正証書にしておくことで、相手が財産分与や慰謝料の支払いについての約束を守らない場合、強制執行の手続きをスピーディーに行うことができます。

5、まとめ

離婚の財産分与は原則として非課税ですが、高額になると課税対象となる可能性があります。ご自身の権利をもれなく受け取り、支払う税金を最小にしたいという方は、離婚前後に各種控除制度を活用して対策を講じることになりますし、離婚の条件や節税対策について相手を説得する必要もあるでしょう。

弁護士が間に入ることで、平等に財産を分与できるよう、法律の知識に基づいたアドバイスや交渉を行えます。また、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスでは、弁護士が税理士と連携して最適な財産分与をサポートすることが可能です。あなたの状況に最適な対策をアドバイスします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています