ゲーム依存の夫や妻と離婚することはできる? 弁護士が解説
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川越市が、令和6年1月に発表した「人口の推移と市民生活」によると、令和2年の川越市では1日あたり3.9組の結婚が成立した一方で、1日あたり1.4組の離婚も成立しました。
近年では、子どもだけでなく成人も長時間ゲームで遊ぶ方は増えています。それに伴い、家庭をもつ社会人であっても、一日中ゲームをしてしまう「ゲーム依存」が問題視されるようになっています。
配偶者がゲーム依存になると、夫婦のコミュニケーションや日常生活に支障が出てしまい、子どもの成長にも悪影響を及ぼすおそれがあります。もし、配偶者が度を過ぎた「課金」を行えば、家計にも影響が及ぶでしょう。そのため、「ゲーム依存の妻や夫と離婚したい」という悩みは、珍しいものではなくなっているのです。
本記事では、配偶者がゲーム依存であることを理由に離婚することは可能かどうか、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。
1、ゲーム依存は社会問題になっている
ひとくちにゲームといっても、テレビゲームやPCゲーム、そしてスマホゲームなど、さまざまな種類があります。
オンラインで他のプレイヤーと協力して遊ぶPCゲームでは、プレイヤーが現実の人間関係よりもネットでの人間関係を重視してしまい、身近な家族のことをないがしろにしてしまう問題が起こりえます。最近では、子ども向けの家庭用ゲームでもオンラインで遊ぶことが当たり前になっており、何気なくゲームをプレイしていた家族が、いつの間にかゲーム依存になっていたという事例もあるようです。
また、SNSやインターネット検索をするかたわらにプレイできるスマホゲームにハマってしまう方もいるようです。スマホゲームには「ガチャ」や「課金」のシステムがあることから、家族のお金を使い込んでしまうトラブルも発生しているようです。
令和元年に世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を国際疾病として正式に認定したことや、令和2年に香川県で「ネット・ゲーム依存症対策条例」が可決されたことも話題になりました。ゲーム依存は、深刻な社会問題となっているのです。
夫婦関係においても、配偶者がゲームに夢中になってコミュニケーションをとってくれない、家事を手伝ってくれず育児も一切しない、課金によって家計が圧迫される、などなどの問題が引き起こされています。そのため、配偶者のゲーム依存を理由にして離婚を検討している人は、少なくないようです。
2、配偶者のゲーム依存を理由に離婚は可能?
夫婦双方が、離婚することに合意すれば、離婚は成立します。
しかし、夫婦の片方に離婚の意思がない場合には、一方の意思だけで離婚を成立させることは難しくなります。原則として、離婚をするには当事者双方の合意が必要だからです。
もし、話し合いをしても離婚に合意ができない場合には、調停や裁判などの手段をとることになります。
裁判上の離婚では、法律上の離婚原因(以下「法定離婚事由」といいます)が認められれば、相手方が反対しても離婚できる可能性があります。
したがって、ゲーム依存の配偶者と離婚したい場合にも、ゲーム依存によって引き起こされている問題が、「法定離婚事由」にあたるかどうかが重要になります。
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(1)法定離婚事由の具体例
法定離婚事由は民法770条に規定されており、具体的には以下のとおりです。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
不貞行為とは、配偶者のある者が配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。いわゆる「不倫」や「浮気」ではありますが、基本的には、デートをしたりキスをしたりするだけでは、不貞行為にはあたらないと考えられます。
悪意の遺棄とは、正当な理由なく民法752条の同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。配偶者に生活費を渡さない、理由もなく同居を拒否する、正当な理由なく家を出て帰らない、配偶者を虐待して家から追い出すなどの行為が悪意の遺棄にあたります。
生死が3年以上明らかでないとは、3年以上生存も死亡も確認できない状態が現在も引き続いていることをいいます。行方不明でも、単に居所がわからないだけで生存が分かっているときはこれにはあたりませんが、生死不明の原因は問われません。
強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとは、その精神障害の程度が婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務、ことに他方の配偶者の精神的生活に対する協力義務を十分に果たしえない程度に達している場合をいいます。強度の精神病であるかどうかは、専門医の鑑定により、その科学的判断を基にして、法律的に判断されます。
その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、上記の事由にはあてはまらないが、夫婦生活を続けることに重大な困難を生じさせている事由をいいます。長期間の別居生活、DV、ギャンブルなどによる極度の浪費癖、薬物依存、セックスレスなどの問題は、この「重大な事由」にあてはまる可能性があります。 -
(2)ゲーム依存は法定離婚事由に該当する?
配偶者のゲーム依存症のために離婚を検討している場合にも、ゲーム依存症によって生じている具体的な問題が上述の法定離婚事由にあたるなら、相手の同意がなくても離婚できる可能性があります。
一方で、離婚を検討している理由が、「配偶者がゲーム依存になったために夫婦の会話がなくなった」、「ゲームにハマった配偶者が、以前よりも家事を手伝わなくなり、子どもと遊ぶ機会も減った」というものであるなら、法定離婚事由に該当するとの判断は困難です。
また、特殊な事例ですが、「配偶者がオンラインゲームで知りあった相手に恋をしてしまい、ゲーム内でデートしたり、チャット機能で毎日会話したりしている」という場合でも、実際に会って肉体関係を結ばなければ、法律上の「不貞行為」が成立しないため、法定離婚事由にはあたらないと考えられます。
また、「自分はゲームが嫌いなのに、配偶者はゲームにハマっている」という性格の不一致も、法定離婚事由にはあたらないと考えられます。
これらのような場合でも、話し合いによって相手が離婚に合意したなら離婚は成立しますが、合意がない状態で裁判をしても法定離婚事由に該当しないと考えられることから、離婚を成立させることは難しいでしょう。 -
(3)ゲーム依存でも法定離婚事由に該当する場合
法定離婚事由として、「ゲーム依存症」そのものが明記されているわけではありませんが、配偶者のゲーム依存症によって引き起こされる具体的な問題が、法定離婚事由にあたる場合はあります。
まず、「課金」の金額が大きすぎて、家計を圧迫している場合です。生活に充てるべき金銭の大半をゲームへの課金に使ってしまい、配偶者に渡すべき生活費も使い果たすという事情があれば、夫婦関係の義務を放棄する悪意の遺棄に該当する可能性があります。
また、ゲーム依存がひどすぎて、働かず家事も全くしないといった場合にも、婚姻生活を継続しがたい重大な事由に該当する可能性があります。労働もせず、家事も育児も手伝わないのであれば、夫婦が互いに協力して扶助する義務を果たせていないと考えられるからです。
法定離婚事由に該当するかどうかは、「配偶者がゲーム依存症であること」自体ではなく、「ゲーム依存症によってどのような問題が引き起こされているか」によります。ゲーム依存によって引き起こされている問題があまりにもひどい場合には、裁判という手段も検討する必要があるでしょう。
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3、配偶者のゲーム依存への対処方法
配偶者の問題が法定離婚事由にあたらない場合でも、問題を解決するための方法は複数あります。
離婚をするための手段として、裁判所での調停がありますが、それよりも穏便な手段で解決できる可能性もあります。弁護士への相談も検討しながら、冷静に対処しましょう。
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(1)ゲーム依存をやめてもらう
離婚を考える原因であるゲーム依存の問題が解決すれば、離婚をする必要もなくなります。「ゲーム依存をやめてほしい」、「ゲームから離れて家族と向きあってほしい」と、話し合いの場を設けてきちんと伝えることで、相手方も改心してくれるかもしれません。
また、ゲーム依存は病気の一種です。そのため、病院で医師の診察を受けたり、クリニックでカウンセリングを受けたりすることで、症状が緩和する可能性もあります。配偶者が自ら「ゲーム依存から脱却したい」と思うようになったら、医療機関の受診も勧めてみましょう。 -
(2)弁護士に相談する
配偶者が、いくら話し合ってもゲーム依存症が改善する様子が見られない場合や、そもそも話し合いに応じてくれない場合には、離婚を検討する必要があるでしょう。
離婚の意思がかたまったなら、まずは弁護士に相談しましょう。離婚に向けての話し合いや手続の流れ、離婚後の経済状況の問題など、さまざまなことについて相談することができます。
また、裁判所などを利用せずに夫婦の話し合いで離婚する「協議離婚」の場合、離婚についての交渉自体を弁護士に依頼することもできます。
さらに、裁判所に持ち込んで調停で争うべきか、そのためには事前にどんな準備をするべきかなども、弁護士に相談すればプロの観点からのアドバイスが得られます。 -
(3)証拠を集める
ゲーム依存を改善する様子がなく、離婚に同意してくれない場合には、裁判所での調停の利用を検討することになります。
裁判所で調停を始める前に、弁護士のアドバイスに従って、配偶者のゲーム依存の証拠を集めましょう。具体的には、配偶者がゲームをしている総時間や夫婦間のコミュニケーションの内容、配偶者が家事や子育てを手伝っていない事実などを記録することになります。ゲームへの課金が家計を圧迫している場合には、クレジットカードの利用明細やプリペイドカードのレシートなども重要な証拠となります。 -
(4)調停で勝てるようにする
離婚調停では、裁判所に選ばれた調停委員が夫婦の間に入り、離婚の必要性や財産の分け方などについて判断するため、夫婦双方から話を聞きます。このとき、「配偶者がゲーム依存になったことが離婚の原因である」ことを示す証拠があれば、離婚の必要性を調停委員に示すことができます。また、離婚の原因が相手の側にあることを客観的に示せれば、有利なかたちで調停を進められる可能性もでてきます。
4、離婚問題は弁護士に相談するべき?
ゲーム依存の配偶者と離婚をしたくても相手が離婚に同意してくれない方や、離婚をするかどうか迷っている方は、以下の理由から弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士なら、離婚時に可能な財産分与の金額や離婚後の経済状況がどうなるかなどの判断材料を示すことができます。
また、離婚を決意されている場合には、離婚に向けての交渉を弁護士に依頼することができます。さらに、調停の場面で有利になれるような証拠の集め方についても、弁護士からのアドバイスが得られます。
法律事務所の料金体系はさまざまですが、初回相談は無料という法律事務所も多くあります。離婚を決意されたわけではなく迷っている段階の方でも、第三者である弁護士に相談することで、自分と配偶者に関する状況について客観的に考えて適切な決断ができるようになる可能性があるため、まずは相談してみることをおすすめします。
5、まとめ
ゲーム依存そのものは法定離婚事由に該当しないため、夫婦の義務を放棄したり、家計を圧迫するほどの課金をしていたなどの重度の依存でなければ、裁判によって離婚を成立させることは難しい場合が多いでしょう。
しかし、話し合いによって、配偶者に離婚の合意をしてもらう協議離婚や、調停委員を間に入れる調停離婚を行うことはできます。
弁護士に相談すれば、協議離婚に向けての交渉や、調停離婚に向けた事前の準備などを依頼することができます。そもそも離婚をするべきかどうか、離婚後の財産分与や経済状況はどうなるか、などについても専門家の視点から客観的なアドバイスを得ることもできでしょう。
「配偶者のゲーム依存が原因で離婚したいけど、どうしたらいいかわからない」とお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスまでお気軽にお問合せください。離婚問題の経験が豊富な弁護士が力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています