【後編】結婚前の浮気が発覚! 離婚や慰謝料請求について弁護士が解説
- 離婚
- 結婚前
- 浮気
前編では、いわゆる浮気、裁判においては「不貞行為」と呼ばれる行為の定義等について解説するとともに、結婚前の浮気に対して慰謝料請求ができるケースはあるのかという疑問にお答えしました。
後半は、具体的に離婚に向けて行動する場合に必要となる証拠や慰謝料の請求方法などを、川越オフィスの弁護士が解説します。
3、慰謝料を請求する際に必要な証拠について
浮気に関するあなたからの追及に対して、相手方が事実を認めれば、それが口頭によるものだったとしても慰謝料を請求できる可能性はあります。しかし、こと浮気については、結婚前の浮気であろうと結婚後の浮気であろうと、最初から簡単に認める相手方は少ないでしょう。
相手方が結婚前に浮気をしていたという確信があなたにあったとしても、それを相手方が否定するのであれば、慰謝料の話はなかなか進みません。そうした中で相手方に浮気という不法行為の事実を認めさせ慰謝料を支払わせるためには、「証拠」の存在が物を言います。特に、裁判などに至った場合には、証拠が何よりも重要といえます。
過去の事例から、浮気の証拠として、主に次のものが有力と考えられます。
- 浮気相手とラブホテルなどに出入りしている写真や動画
- ラブホテルなど肉体関係があったと考えられる場所を利用した際の領収書
- 肉体関係の事実があると認められる内容のメール、SNS、通話の録音、手紙など、浮気相手との通信記録
- 浮気相手との性行為の写真や動画
先述のとおり、浮気とは、一般的に、配偶者以外の人との性行為のことです。この事実を明らかにするための証拠を集めることは、浮気をしている相手方の警戒もあり、難しいことが多いと考えられます。浮気をしていたのがかなり昔のことであれば尚更です。証拠集めのために有償で第三者の力を借りることも一案ですが、費用対効果についても十分に考慮しておく必要があるでしょう。
4、結婚前の浮気が原因で離婚する場合
あなたが結婚前の浮気は結婚前のことと割り切ることができれば、相手方と婚姻関係を継続すればよいでしょう。しかし、結婚前の浮気が原因で、相手方への信頼が崩壊し離婚をしたい、慰謝料を請求したいと考えることもあると思います。
あなたが結婚前の浮気を原因とする離婚について相手方と話し合った結果、慰謝料などの条件を含め相手方と合意に至れば何も問題はありません。しかし、相手方が浮気の事実を認めない、離婚を拒否するなど話がうまく進まないことも当然に考えられます。
話合いや調停によって離婚を成立させることができない場合、残る手段は裁判です。民法上、相手方が離婚を拒否していても裁判で離婚が認められる要件が定められており、そのうちの一つとして「配偶者に不貞な行為があったとき」(民法第770条1項1号)という要件があります。もっとも、この規定は、通常、婚姻期間中の浮気をいうものであり、結婚前に浮気があっても、直ちにこの要件を満たすとはいえないようです。
しかし、相手方の意向にかかわらず裁判で離婚が認められる別の要件として「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)という要件があります。結婚前の浮気を理由として離婚を請求する裁判を起こした場合、この要件を満たすとして離婚が認められる可能性があります。ただし、結婚前の浮気のみではこの要件が認められる可能性は低いと考えられます。その他の、夫婦関係を続けることが困難であることを示すような事情についてもあわせて主張立証していく必要があります。その際には証拠が重要となるので、その収集も怠らないようにしてください。
5、結婚前の浮気で離婚および慰謝料を請求する方法
もし、あなたが相手方の結婚前の浮気を理由に離婚を決意した場合、準備が必要です。相手方と、離婚について合意するだけでなく、慰謝料や財産分与、年金分割などのほか、すでに子どもがいる場合は親権の帰属といった離婚の条件を決めなくてはなりません。
これらの点について、夫婦ふたりの話し合いで合意できればよいのですが、そうでない場合は家庭裁判所など第三者に入ってもらわなければならいこともあります。家庭裁判所による介入の有無および介入の方法によって、離婚の方法は4種類あります。
-
(1)夫婦間の協議
離婚することや慰謝料などの離婚条件を夫婦間で話し合い、合意できれば役所に離婚届を提出し終了します。場合によっては親族などが間に入って調整することもあるでしょう。夫婦間の協議による離婚は費用もかからず、裁判所などに赴く必要もなく、もっとも簡単な離婚方法です。
ただし、話し合った内容を書面に残しておかないと、養育費等が約束どおり支払われない場合等、後々の生活で困ることになる可能性があります。必ず離婚協議書を作成し、可能であれば公正証書にしておくことをおすすめします。 -
(2)調停
夫婦間の話し合いで離婚や慰謝料の合意を得られない場合、家庭裁判所へ調停を申し立てることになります。
調停では、夫婦の間に調停委員と呼ばれる人が入り、調停委員を介して夫婦間で話し合いを行います。調停委員が間に入ることで、夫婦間だけの話し合いよりも冷静に話し合えることが期待できます。
調停で離婚の合意に至ると、離婚が成立したことのほか、慰謝料の支払いなどの合意内容について「調停調書」が作成されます。この調停調書が作成されることにより、もし相手方が合意したはずの慰謝料の支払いを行わない場合は、相手方に対して強制執行の申し立てが可能になります。調停の成立により離婚が成立しますが、調停の申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚調停調書の謄本を添えて、市区町村に対し離婚届を提出する必要があります。
なお、日本では離婚について「調停前置主義」がとられており、調停を経ることなく裁判に移行することはできません。 -
(3)審判
調停における話し合いで、離婚することについては夫婦双方が合意しているものの、慰謝料の金額など離婚条件がわずかに折り合わず、最終的な離婚合意に至らないこともあります。
このような場合、家庭裁判所が離婚することが妥当と判断した場合は、夫婦の離婚を認める審判を出すことがあります。審判の効力は2週間以内に夫婦の一方が異議申し立てを行うと無効になってしまいます。このためか、審判による離婚は件数としては少ないです。 -
(4)裁判
調停で折り合いが付かない場合は、調停は不成立となり、離婚を求める訴えを提起することができます。
裁判では、浮気などの事実が本当にあったのかどうかを証拠から判断し、最終的に、民法上の離婚原因の有無について結論が出されます。慰謝料などの金額については、これまでの裁判例に照らして、その事案に妥当な金額がいくらなのかが決められます。
裁判所に離婚の訴えを提起すると、書面や口頭により夫婦双方の主張を展開したうえで、最終的には和解または判決という流れで決着します。もし当事者の一方または双方が判決に対して不服がある場合、高等裁判所に控訴することになります。
6、まとめ
浮気を原因として離婚を求めていくにあたっては、証拠集めが難しく、証拠が乏しいと、離婚そのものが認められなかったり、十分な慰謝料を得られない結果となったりしてしまいます。それに加え、結婚前の浮気であれば、それが離婚原因に該当するか否かという議論がでてくるため、なおさら離婚が困難になるでしょう。
そのような問題でお悩みの場合、ぜひ弁護士に相談してみることをおすすめします。離婚問題に豊富な経験のある弁護士であれば、あなたの代理人として可能な限り望ましい結果になるように活動いたします。
まずはベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士に相談してみてください。離婚問題の経験が豊富な弁護士が、過去の事例なども照らし合わせ、適切なアドバイスを行います。
>前編はこちら
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています