1か月でも家賃を滞納したら強制退去させられる? 弁護士が解説
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川越市の市営住宅は、住居に困っている低所得者の生活の安定と社会福祉への寄与を目的として、国の補助を受けて市が建設し、低廉な家賃で提供されています。令和元年度時点での川越市内市営住宅の数は65棟、総戸数1100戸です。ただし、希望していてもなかなか入居できないという状況があるようです。
年収が一定額あったとしても、それ以上に借金の返済に追われていたり、失業や休業により収入が激減したりした結果、家賃滞納に陥る可能性があるでしょう。賃貸住宅に住んでいる場合は、家賃を滞納したらすぐ裁判を起こされたり、強制退去させられたりするのではないかと心配されているかもしれません。
本コラムでは、強制退去が不安な方のために、まず1か月の家賃滞納をしてしまった場合の対処法を、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が紹介します。
1、家賃1か月分の滞納で退去を求められる?
はじめて家賃を滞納してしまった場合、「退去を求められるかもしれない」という不安を感じるのは自然なことです。しかし、世帯主の離職、病気やケガなどによる収入の減少などによる一時的な滞納はやむを得ない事態といえます。
近年は、家賃保証会社との契約が必須となっている物件も多いことから、1か月の滞納でただちに大家から退去を求められることはないと考えてよいでしょう。
2、家賃を滞納した場合、どのような督促がある?
家賃を滞納した場合に、どのような督促がなされるかを知っておきましょう。本項では、一般的な例を紹介します。
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(1)管理会社や大家から連絡が入る
家賃の支払日の時点で入金がない、引き落としができない場合、数日~一週間以内に管理会社や大家から電話や訪問で確認があるでしょう。手続忘れ等、支払がされていない事情の確認をするためです。
このとき相手の連絡を無視し、連絡が取れない状態にしてしまうと家主の心証が悪くなりますので、必ずすぐに応答し、素直に現在の状況を説明しましょう。連絡が取れない状態であり、連帯保証人がいる場合は、連帯保証人に連絡が入る可能性もあります。 -
(2)督促の内容証明郵便が届く
電話や口頭で催促しても3~4か月ほど滞納が続く場合には、催促をしたという証拠を残す意味合いから、内容証明郵便を用いて、支払いを催促されることがあります。
内容証明郵便による催促をしても支払いがない場合は、賃貸借契約を解除し、期限を定めて明け渡しを求めることなどを内容とする内容証明郵便が送付されることが考えられます。
借主と家主の間の信頼関係が失われていると判断されると、強制執行のおそれが出てきますので、連絡に対しては誠実に見通しを話すようにしましょう。 -
(3)裁判と強制執行
賃貸借契約を解除する旨の通知をして明け渡しを求めても、自主的に立ち退かないでいる場合には、最終的には裁判により明け渡しを求められることになります。
裁判では、貸主と借主の信頼関係が破壊されたのかどうか、賃貸借契約の解除が有効かどうかなどについて判断がされます。貸主の請求を認める判決が下された場合、それをもとに強制執行が可能となります。
3、家賃を滞納した場合の対処法は?
住居は生活の基盤です。もちろん今の住まいに住み続けたいと考えるのが普通です。では、さまざまな事情により家賃が支払えない場合には、どのように対処すべきでしょうか。
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(1)管理会社や大家に相談する
できれば滞納に至る前に管理会社や大家に連絡を取り、相談してください。事情を包み隠さず説明し、自らの誠実な態度を示すことによって、対応が軟化する可能性があります。ただし、延期をしてもらった場合は期限を守って支払うことが、今後のためにも非常に重要なポイントとなるでしょう。
また、以下に詳述する住居確保給付金の利用についても相談しておくことをおすすめします。 -
(2)住居確保給付金制度を利用する
住宅確保給付金制度とは、経済的に苦しい状態に陥り住居を失うおそれの高い方を対象に、条件を満たせば原則3か月、最大9か月の間、家賃相当額を自治体から家主に支給するものです。
対象者は、「離職・廃業から2年以内」または、「個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している」場合です。
給付を受けることができれば、直接家主に家賃が支払われるため、滞納や退去を回避できるはずです。利用する際はお住まいの自治体の窓口に問い合わせてみましょう。 -
(3)生活福祉資金貸付制度でお金を借りる
生活資金で困っている場合、各都道府県の社会福祉協議会の無利子での貸し付けを利用するのもひとつの手です。
新型コロナウイルスの対策として、一時的に対象者が拡大されています。
消費者金融などで簡単にお金を借りることができるかもしれません。しかし、消費者金融などでお金を借りると、高い金利を取られることが多いです。現時点で家賃の支払いが難しいという状態であれば金利の高さも相まって、支払いに困窮する可能性が高いと考えられます。できれば避けたほうがよいでしょう。 -
(4)生活保護を受ける
収入が少なく、どうやっても家賃の支払いができないという場合は、生活保護を受給して生活を維持するという選択肢があります。
ただし、生活保護を受給する場合は財産に一定の制限があります。また住居費にも制限があるため、補助金を大幅に上回る家に住んでいる場合は、現在の住居を引き払って制限内の家賃の物件に引っ越すように指導されることがあるでしょう。
4、借金返済で家賃が払えないなら債務整理を
家賃を公的資金で立て替えてもらえる手段は前項で紹介しましたが、別の借金の返済に充てることは当然できません。
もしも、多重債務などにより家賃が支払えない状況であるならば、まずは債務整理により、借金の返済負担を軽減することをおすすめします。
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(1)債務整理の種類
債務整理とは、弁護士などを通じて債権者との交渉や裁判所への申し立てを行い、将来発生する利息の軽減、借入元金の減額や免責などを行う手続きです。
具体的には、次のような方法があります。- 任意整理
債権者との話し合いによって将来の金利カットなどの交渉をして借金を減額する方法。 - 個人再生
裁判所の手続きによって3~5年での完済を目指し借金を圧縮する方法。 - 自己破産
裁判所の手続きによって、財産を整理する代わりにすべての借金を帳消しにする方法。
個人再生と自己破産は、裁判所を通じての手続きであり、破産手続きについては官報に氏名住所などが掲載され公示されます。
一方で、任意整理は直接に債権者と交渉するため、対外的に公表されることはありません。
任意整理は、将来利息をカットしたり、分割回数を増やすことで無理なく返済を続けられるよう貸金業者と交渉します。弁護士に依頼することでより1回の支払い額を低く抑えてもらえる可能性が高まるでしょう。
借金の利息がなくなれば返済をしつつ生活ができるという場合に適しているでしょう。 - 任意整理
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(2)滞納家賃を債務整理の対象にするデメリット
債務整理をするなら、借金とあわせて滞納した家賃も減額・免除の対象にしたいと考えるかもしれません。しかし、滞納した家賃を債務整理の対象にすると、貸主にとっては家賃収入が大きく減少することとなり、退去を求められる可能性があります。
そのまま今の住居に住み続けたいのであれば、滞納した家賃は債務整理の対象にしないほうが賢明でしょう。ただし、賃貸住宅の家賃延滞分を債務整理の対象から外す選択ができる方法は、任意整理のみに限られます。
5、弁護士に債務整理について相談するメリット
グレーゾーン金利や延滞している債務に適用される法定金利は、借金をした時期により変化します。これらの詳細を法的知識のない個人で計算し、交渉することは難しいものです。
任意整理は、債権者と直接交渉をする必要があり、個人で対応するには荷が重いといえます。他方、家賃滞納がある状態で自己破産などを行う場合、延滞分の家賃のみを支払うといった特定の債権者のみに対して支払いをする行為が免責不許可事由となりえます。したがって、自己破産ができない可能性が高まってしまうのです。
弁護士に依頼すれば、あなたの生活の安定を最大限に配慮しながら最適な方策を提案します。借金の種類や金額に応じ適切な債務整理を進めることをおすすめします。
弁護士に債務整理を依頼するメリットは、もうひとつあります。これまで督促に苦しめられてきた方は少なくないと思われますが、弁護士に対応を委任した時点で、あなたへの督促が止まるのです。債権者への対応は依頼を受けた弁護士が行うため、債務整理の手続きが終わるまでの間、生活の立て直しに注力できるのではないでしょうか。
ひとりで悩まず、まずは弁護士に相談してください。
6、まとめ
家賃を滞納し強制退去させられると、生活を立て直すことが非常に難しくなります。まずは誠意をもって家主側と相談し、各種給付金を受け、支払い猶予期間内に解決策を模索しましょう。
債務整理を検討する場合は、どの方法で整理するのかから、交渉や裁判所への手続きについて弁護士に相談することをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 川越オフィスでは、借金による家賃滞納問題を取り扱っております。あなたの生活の安定を取り戻すために、債務整理の手続きや家計収支健全化のアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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