車のローン返済中に債務整理できる? 新たにローンを組めるかも解説
- 任意整理
- 債務整理
- 車ローン
新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化などの影響を受け、労働者の雇用や収入にも多大な影響が生じました。
収入が減少して、借金の返済が困難になってしまった場合、「債務整理」を検討してみてはいかがでしょうか。もっとも、車を購入するときにローンを利用している場合には、債務整理をすることによって、車を失ってしまう可能性があります。
そこで、本コラムでは、車のローン返済中に債務整理をすることができるのかについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説いたします。
1、カーローンは主に三種類ある
カーローンは、大きく三種類に分けることができます。以下では、三種類のカーローンの仕組みと違いについて解説します。
-
(1)銀行系カーローン
銀行系カーローンとは、主に銀行や信用金庫などの金融機関が提供しているカーローンのことをいいます。
銀行系カーローンでは金融機関が主体となって貸付けをおこないますので、他のカーローンに比べると審査が厳しく、借入れまでに時間がかかるというデメリットがあります。しかし、他のカーローンに比べて金利が低く設定されていることが多いため、支払総額を安く抑えたいという方には最適なカーローンといえます。 -
(2)信販会社系カーローン
信販会社系カーローンとは、オリコ、アプラス、ジャックスなどの信販会社が提供しているカーローンのことをいいます。信販会社系カーローンでは、銀行系カーローンのように車の購入費用を貸付けるという形ではなく、信販会社が購入した車の代金をカーローンの利用者が支払っていくという形になります。いわば、信販会社が車の購入費用を立て替えるというローンです。
信販系カーローンは、銀行系カーローンに比べて金利が高いというデメリットがあります。一方で、事務手続きが簡単で審査時間も短いというメリットもあります。 -
(3)ディーラー信販会社系カーローン
ディーラー信販会社系カーローンとは、トヨタファイナンス、日産フィナンシャルサービスなどの自動車メーカー(ディーラー)系列の信販会社が提供しているカーローンのことを指します。基本的な仕組みについては、信販会社系カーローンと同一です。
2、債務整理すると車は没収されるのか?
債務整理をした場合に車を没収されるかどうかは、利用している自動車ローンの種類によって異なります。以下では、没収されるケースとされないケースに分けて解説いたします。
-
(1)車が没収されるケース
信販会社系カーローンやディーラー信販会社系カーローンについては、信販会社が車の購入代金を販売店に立て替え払いをして支払っていることが多く、本人は信販会社が立て替えて支払った購入費用を信販会社に分割で支払っていきます。
信販会社では、立て替え払いをした代金が完済されるまでの間は、購入した車を立替金の担保にしていることが多く、その車の所有権は信販会社に留保されていることが一般的です。これを「所有権留保」といいます。
このような状態で債務整理をおこなった場合に、信販会社は、立て替え払いをした代金債権を保全するために、担保にとっている車を没収して、その車を売却したうえで立替金の残額に充てることになります。そのため、信販会社系カーローンやディーラー信販会社系カーローンを利用し、かつローン完済前で、車の所有権が信販会社に留保されている場合には、債務整理の種類によって、車は没収されてしまう可能性が高いと考えた方がよいでしょう。 -
(2)車が没収されないケース
銀行系カーローンでは、銀行は車の購入代金を貸付けしているだけの立場となることが多いです。車を販売店から購入するのは、カーローンを利用する本人となります。
したがって、この場合、車の所有権はカーローン利用者本人にあります。そうすると、債務整理をしたからといって、車を没収される可能性は低くなります。
ただし、後述するように、実行する債務整理の種類によっては銀行系カーローンであっても車を没収される可能性がありますので注意が必要となります。
3、任意整理・個人再生であれば没収されない可能性がある
自動車ローンの種類によっては、自動車を没収されてしまう可能性があります。
没収を避けるためには、債務整理の方法を適切に選択することが重要です。
-
(1)債務整理の種類
債務整理の方法は、以下の三種類となります。
① 任意整理
任意整理とは、債権者との交渉によって、債務者と債権者との間で、借金の毎月の支払額の減額や将来利息のカット等について合意することを指します。
現在返済している金額では厳しいが、返済金額が少なくなれば、分割で返済していくことが可能であるという場合には、任務整理が有効な方法となります。
② 自己破産
自己破産とは、裁判所を利用する法的整理の一つであり、免責を得ることによって借金がゼロになる方法のことをいいます。任意整理は債権者との交渉によっておこなう私的な手続きであるのに対して、自己破産は、裁判所に申立てをしておこなう手続きであるという違いがあります。
自己破産を選択する最大のメリットは、免責を受けることができれば借金がなくなるという点です。
他方、自己破産をおこなうためには、資産がある方は、その資産を手放して換価したうえで、債権者への弁済にまわさなければなりません。そのため、手元にある資産を失う可能性がある点がデメリットになります。
したがって、自己破産は、「借金が多く、目ぼしい資産も手元にない」という方にとって有効な債務整理の手段といえるでしょう。
③ 個人再生
個人再生とは、自己破産と同様に裁判所を利用する法的整理の一つですが、自己破産と異なり借金が全てなくなることはありません。個人再生では、裁判所の決定によって、借金の金額を大幅に減らし、原則として3年間、最長で5年間の分割払いで返済していくという方法がとられることになります。3年間の返済期間では返済してくことが難しい場合、返済期間の延長申請が必要となります。返済期間の延長申請を認めるかどうかは裁判所が判断することになります。 -
(2)車を没収されない方法
債務整理をしたとしても車を没収されない方法もいくつかあります。債務整理ごとの具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
① 任意整理
任意整理では、自己破産や個人再生と異なり、特定の債権者を除外して債務整理をおこなうことが可能です。信販会社系カーローンやディーラー信販会社系カーローンでは所有権留保が付いていることが多いですので、自動車ローンを債務整理の対象に含めてしまうと、留保した所有権に基づき車が没収されてしまう可能性が高いです。しかし、カーローンを除いた借金のみを債務整理の対象とすることができれば、車の没収は回避できるのです。
② 自己破産
自己破産をするときには、原則として資産はすべて手放して換価したうえで、債権者への返済にまわさなければなりません。そのため、カーローンの種類を問わず、原則として車は没収されてしまうのです。
しかし、車については、20万以下の時価額である場合、手元に残せる可能性があります(ただし、裁判所によって運用は異なります)。
車の所有権がローン会社に留保されている場合は、換価の対象となりますが、銀行系カーローンで、所有者が本人であるケースでは、上記の条件を満たすときには、自己破産をしたとしても車を残すことができる場合があります。
③ 個人再生
個人再生では、すべての債権者を債務整理の対象に含めなければなりません。したがって、信販会社系カーローンやディーラー信販会社系カーローンのように、所有権留保が付いているローンも債務整理の対象にしなくてはなりません。したがって、所有権留保が付いているカーローンを利用している場合で、ローン支払い中の車は、原則として換価の対象となります。
4、債務整理後にローンは組めなくなるのか?
一般的に、「債務整理後にローンを組むことは難しい」といわれています。
ここでは、債務整理後にローンを組むことが難しい理由や、それでも債務整理後にローンを組む方法はあるのかどうかについて、解説いたします。
-
(1)債務整理をすると事故情報が登録される
債務整理をした場合には、その情報が信用情報機関に「事故情報」として登録されることになります。信用情報とは、銀行・貸金業者・クレジット会社などが利用者から審査の申し込みがあったときに、「お金を貸しても大丈夫な相手か」どうかなどを判断するために利用されるものです。
信用情報を照会した結果、審査の申し込みをした利用者に事故情報が登録されていることが判明した場合には、金融機関としては「この利用者から確実な返済を受けることができるかどうか不安が残る」と判断します。そのため、ローンの審査が通らないことが多くなるのです。 -
(2)再度ローンを組むことは可能
債務整理をおこない、その情報が信用情報機関に登録されたからといって、その後ずっとローンが組めなくなるわけではありません。
信用情報機関に情報が登録されたとしても、一生登録され続けるというわけではなく、一定期間が経過したらその情報は抹消されることになります。一般的に、信用情報機関への登録は、債務整理をした日や滞納が解消された日から5~10年で抹消されます。そのため、ローンの審査に通らなくても、数年後に改めて審査を申し込めば、ローンを組むことが可能なこともあります。
5、債務整理を弁護士に依頼するメリット
車のローンが残った状態での債務整理を考えている方は、債務整理に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
すでに説明したとおり、自動車ローンや債務整理にはいくつかの種類があります。そして、自動車ローンの種類によっては、車の没収を回避することが可能となります。したがって、適切な債務整理によって車を残すことも可能になる場合もあるのです。特に、任意整理で債権者と交渉をして車を残す方法を検討する場合や自己破産を検討する場合は、債務整理に関する経験が豊富な弁護士に相談すべきでしょう。
仕事や日常生活において車の利用が不可欠な方は多いものです。債務整理後も車を残せるかどうかは、今後の経済的再建にとっても重要な課題となります。また、弁護士に相談をすることによって、相談者の状況に応じた最適な債務整理の方法を提案してもらうこともできます。車のローンがあり、借金の返済に苦しんでいるという方は、ぜひ一度、弁護士に相談することをおすすめいたします。
6、まとめ
車のローンがあるときに債務整理をおこなう場合でも、ローンの種類や債務整理の方法によっては、車を没収されないこともあります。弁護士に相談をすることによって、車の没収を回避するための債務整理の方法を適切に選択することが可能となる場合もあるでしょう。
資金繰りに行き詰まり、車のローン返済ができなくなってしまったという方は、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスまでぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|