公正証書遺言に効力はある? 作成の注意点と自筆証書遺言との違い
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「自分の死後に起こる相続争いを回避したい」という思いから、生前に遺言書を作成することを検討されている方もおられるでしょう。
遺言書には、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があるため、まずは、どちらの方式で遺言を作成するのかを決めなければなりません。遺言は基本的には、公正証書遺言として作成することをおすすめします。
本コラムでは、公正証書遺言の効力と自筆証書遺言との違いについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。
1、公正証書遺言の効力とは?
まず、公正証書遺言とはどのようなものであるのか、また公正証書遺言にはどのような効力があるのかについて解説します。
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(1)公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場の公証人が作成する方式の遺言です。
生前の相続対策で利用される遺言には、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。
公正証書遺言は、公証人という専門家が関与するという点で、遺言の不備によって無効になるというリスクが少なく、偽造や紛失のおそれがないといった特徴があります。 -
(2)公正証書遺言の効力
公正証書遺言に記載をすればどのような内容であっても法的効力が認められる、というわけではありません。
遺言書に記載することによって、遺言としての効力が認められる事項を「遺言事項」といいます。遺言事項にあたるものは、民法によって具体的に規定されています。
これに対して、遺言事項以外のものは「付言事項」といい、法的効力はありません。しかし、付言事項を記載することで家族に対するメッセージを伝えて、相続争いを防ぐことが期待できる、といったメリットがあります。
① 財産に関する遺言事項
財産に関する遺言事項としては、以下のようなものが挙げられます。- 祭祀承継者の指定
- 相続分の指定、指定の委託
- 特別受益の持ち戻しの免除
- 遺産分割方法の指定、指定の委託
- 5年を超えない期間での遺産分割の禁止
- 相続人相互間の担保責任の指定
- 遺贈
- 遺留分侵害額負担割合の指定
② 身分関係に関する遺言事項
身分関係に関する遺言事項としては、以下のようなものが挙げられます。- 遺言認知
- 未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
- 推定相続人の遺言廃除、取消
③ 遺言執行に関する遺言事項
遺言執行に関する遺言事項としては、以下のものがあります- 遺言執行者の指定、指定の委託
2、公正証書遺言が有効になる要件と無効になるケース
公正証書遺言であっても、法定の要件を満たさない場合には無効になります。
以下では、公正証書が有効になる要件と無効になるケースについて、それぞれ解説します。
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(1)公正証書遺言が有効になる要件
民法では、公正証書遺言の作成要件として、以下の5つを定めています。
① 2人以上の証人の立ち会いがあること
公正証書遺言を作成する場合には、2人以上の証人の立ち会いが必要になります。
ただし、以下のような人は証人になることができません- 未成年者
- 推定相続人、受遺者、これらの配偶者および直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人
② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
遺言者は、公証人に口頭で遺言の内容を伝えなければなりません。
とはいえ、「一語一句漏らさず、すべて口頭で伝える」といったことまでは要求されていません。
③ 公証人が遺言者の口授を筆記し、遺言者と証人に読み聞かせること
公証人は、遺言者から口頭で伝えられた内容をもとに公正証書遺言の原本を作成します。
作成した公正証書遺言の原本は、遺言者と証人に読み聞かせるか、閲覧をさせなければなりません。
④ 遺言者と証人による署名押印
読み聞かせまたは閲覧した公正証書遺言の原本が正確なものであることを確認したら、遺言者と証人は、公正証書遺言原本に署名押印をします。
⑤ 公証人による署名押印
最後に公証人によって署名押印をして、公正証書遺言は完成します。 -
(2)公正証書遺言が無効になるケース
以下のようなケースでは、公正証書遺言が無効になる可能性があります。
① 遺言者に遺言能力がないケース
有効な遺言を作成するためには、遺言者に遺言能力があることが必要です。
遺言能力とは「遺言の内容を理解して、どのような効果が生じるかを判断することができる能力」です。
このような遺言能力がない方の場合には、たとえ公正証書の方式で作成したとしても、無効になってしまいます。
遺言能力がない方の例としては、以下のような人が挙げられます。- 15歳未満の人
- 認知症などによって意思能力を失っている人
② 証人欠格者が証人になったケース
既に説明をしたとおり、公正証書遺言の作成にあたっては、2人以上の証人が必要になります。
しかし、法律では、証人になることができない人が定められています。そのような人のことを「証人欠格者」と呼びます。
証人欠格者が証人になった場合には、公正証書遺言は無効になります。
ただし、実際には証人の年齢や関係性は公証人によって確認されるため、証人欠格者が証人になることはほとんどないといえます。
3、公正証書遺言のメリットとデメリット|自筆証書遺言との違い
公正証書遺言を作成することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
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(1)公正証書遺言のメリット
公正証書遺言のメリットとしては、以下の点が挙げられます。
① 方式の不備で無効になることはない
公正証書遺言は専門家である公証人が作成する遺言であるため、方式の不備によって無効になるリスクはほとんどありません。
そのため、遺言の内容を確実に実現したいという場合には、公正証書遺言を作成することをおすすめです。
これに対して、自筆証書遺言は、遺言者だけで作成することができてしまうため、遺言の要件についての正確な知識がなければ方式の不備によって遺言が無効になるというリスクがあるのです。
② 偽造や紛失のリスクがない
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されているため、遺言書を紛失してしまったり、誰かに書き換えられてしまったりするといったリスクがありません。
また、遺言者の死後は、相続人が公証役場に公正証書遺言の有無についての照会をかけることができるため、遺言書が存在するという事実が容易に判明するというメリットもあります。
これに対して、自筆証書遺言は、基本的には遺言者自身で保管をしなければなりません。
そのため、紛失したり偽造されたり、また保管場所によっては遺言者の死後に遺言を見つけてもらえないというリスクもあるのです。
③ 裁判所での検認手続きが不要
法務局で保管をされていない自筆証書遺言については、裁判所での検認手続きを行わなければ、遺言に従って相続手続きを進めていくことができません。
これに対して、公正証書遺言は裁判所での検認手続きが不要となるため、相続人の手続の負担が軽減するのです。 -
(2)公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
① 費用がかかる
公正証書遺言を作成する場合には、財産の金額に応じて公正証書遺言の作成手数料がかかります。
これに対して、自筆証書遺言であれば無料で作成することができます。
② 証人を2人見つけなければならない
自筆証書遺言であれば遺言者だけで作成することができますが、公正証書遺言を作成する場合には、2人以上の証人を準備しなければなりません。
推定相続人などは証人になることができないため、証人を頼める人が見つからず苦労するという場合もあります。
4、公正証書遺言を作成する際の注意点
公正証書遺言を作成する際には、以下のような点に注意が必要です。
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(1)遺留分の配慮が必要
公正証書遺言を作成することによって、遺言が無効になるリスクを減らしながら、将来の相続争いを防止することができます。
しかし、遺言の内容によっては、遺言を作成したことが原因で相続争いが生じてしまうおそれもあるという点に注意してください。
特に気を付けなければならないのは、相続人の遺留分に関する配慮です。
「遺留分」とは、相続人に保障されている最低限の遺産の取得割合のことをいいます。
遺留分を侵害する内容の遺言であっても有効ですが、遺留分をめぐって相続人間でトラブルが生じる可能性があります。
どうしても遺留分を侵害する遺言を作成しなければならない事情がある場合には、付言事項などの利用も検討してみましょう。 -
(2)公証人は遺言の内容に関してアドバイスしてくれない
公証人は、法的に不備のないように遺言の作成をしてくれますが、遺言の内容については具体的にアドバイスをしてくれません。
遺言を作成するにあたっては、相続財産の状況や相続人との関係性などふまえて内容を決めていく必要があります。そのためには、専門的知識が不可欠となります。
弁護士であれば、個別具体的な状況をふまえて最適な内容の遺言書になるようにアドバイスすることができます。
どのような内容の遺言書にすればよいかわからずお悩みの方は、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
自筆証書遺言に比べて、公正証書遺言には形式面の不備によって遺言が無効になるリスクが少なく、偽造や紛失の心配もないなどのメリットがあります。
そのため、遺言の内容を確実に実現したいという方には、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言として作成することをおすすめです。
希望する内容で遺言書を作成するためには、弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。
遺言書の作成を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています