相続の手続には時効があるの? 相続の流れとともに弁護士が解説

2022年12月13日
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相続の手続には時効があるの? 相続の流れとともに弁護士が解説

相続の手続には、一定の期間が経つと時効により手続ができなくなってしまうものも存在します。

時効の長さは手続の種類によって変わりますが、いずれの場合も、時効を過ぎてしまうと手続を先に進めることができなくなります。

本コラムでは、相続の基本的な流れから、手続ごとの時効まで、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、相続の流れを解説

まず、相続の流れについて基礎知識を解説します。

  1. (1)相続手続の第一歩

    相続が発生した場合、まず一番初めにやるべきことは、「相続財産の確定」です
    被相続人の名義である不動産や現預金、株式や有価証券などプラスの財産の他、借金などのマイナスの財産も、すべて相続財産として算出しましょう。

    次に行うのは、「相続人の確認」です。
    家族構成によって相続人となる人は違いますので、被相続人の出生の時からの戸籍をすべて取得し、相続人が誰なのかを特定しましょう。そして、遺言が無いかどうかも確認します。

    遺言がある場合には、原則として遺言にしたがって相続財産を分割する必要があります。遺言がない場合には、法定相続割合に沿って相続人同士で協議を進めることになります。

  2. (2)遺産分割協議

    遺産分割協議には、必ず相続人の全員が参加しなければいけません
    いったん遺産分割協議が成立した後であっても、もし新たな相続人の存在が判明した場合は、それまでに行った協議を新たな相続人を交えてやり直さなければならない可能性もあります。

    全員で話し合いがまとまったら、遺産分割協議の内容を書面にまとめます。この書面を「遺産分割協議書」と呼びます。遺産分割協議書が完成してからでないと、原則として被相続人名義の財産の処分や名義変更などの手続に進むことはできません。銀行預金を引き出すためにも、不動産の登記変更のための法務局手続なども同様です。

  3. (3)相続税の納付

    遺産を相続した相続人は、遺産総額から自身が相続した割合に応じて、相続税を負担することになります

    なお、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人数×600万円)以内であれば、そもそも相続税を申告する必要はありません。基礎控除の範囲を超えている場合のみ、被相続人の住所地を所轄する税務署に相続税申告書を提出する必要があるのです。

2、相続が始まってから1年以内にくる時効

以下では、相続における時効について、手続の種類ごとに解決します。

  • 相続放棄の時効:3カ月
「相続放棄」とは、被相続人の財産の受け取りを一切放棄する手続のことです。
被相続人が残したプラスの財産よりも、借金などのマイナスの財産が大きいときに検討することが多いです。

なお、相続放棄では、「被相続人に属する一切の財産」を放棄する必要があります。

相続放棄には、原則として「相続開始から3か月」という時効が存在します
3か月を過ぎてしまうと原則として相続放棄ができなくなってしまいますので、注意が必要です。
とくに被相続人が突然亡くなって、財産がはっきりしない場合には、相続放棄をするという選択も念頭におきながら、急いで調査等を行う必要があるでしょう。

  • 相続税の申告:10カ月
相続税の申告は、相続があったことを知った日の翌日から10か月以内に、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません
相続人同士の足並みがそろわずに遺産分割することができない場合であっても、申告期限の猶予は認められません。

10か月以内に遺産分割ができない場合には、いったん、民法の規定による相続分に基づいて相続税を計算して、相続税の申告を行うことになります。
なお、遺産分割未了の状態で行う仮の相続税の申告においては、配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地等の特例を受けることができません。
ただし、仮の申告の際に、今後3年以内に遺産分割ができる見込みがあることを併せて申告しておくと、3年以内に遺産分割がなされた際に特例を受けることができます。

  • 遺留分侵害額請求の時効:1年
「遺留分侵害額請求」とは、遺言によって相続割合に応じた遺産を受け取れず、かつ、受け取った財産が不当に少なかった場合に、多くの利益を得た相続人や受遺者(法定相続人ではないが遺言によって相続した第三者)に対して、自身の遺留分を請求することを指します。
「遺留分」とは、民法で取り決められている相続人に最低限認められている相続分のことです。
例えば、相続人以外の第三者に全財産を譲るという遺言書があれば、相続人の遺産取得分は0円となってしまいます。このような場合にも、遺留分侵害額についてだけは、第三者に対して請求できるのです。遺留分侵害額請求権とは、この遺留分を請求する権利のことをいいます。

遺留分侵害額請求権にも、相続の開始及び遺留分を侵害するできごとがあったことを知った時から1年以内という時効があります
また、上記に関わらず相続の開始から10年経つと請求権が失われてしまうのです。

3、相続が始まってから10年以内にくる時効

  • 相続回復請求の時効:5年
本来、相続は、相続人としての資格を有している人しか相続できません。
しかし、場合によっては、相続人としての資格が無いにも関わらず相続手続の対象となってしまうこともあります。
たとえば、相続廃除された人、無効な養子縁組届けで養子になった人、無効な婚姻届で配偶者になった人などが相続手続の対象となってしまう場合があるのです。

真正の相続人でない第三者が相続した場合に、法定相続人が遺産分割を受けた財産の返還を求めることを「相続回復請求」(民法884条)といいます。
なお、相続回復請求には、相続人やその法定代理人が相続権の侵害を知った時から5年、また相続開始から20年という時効があります

4、とくに時効が設けられていないもの

以下では、相続に関する手続きのなかでも、とくに時効が設けられていないものについて解説します。

  • 不動産名義の変更
被相続人が土地や建物の不動産を所有していた場合、相続人が不動産の名義を変更する必要があります。
遺言書の内容や遺産分割協議に沿って不動産の相続分が決定するため、相続人が多いほど話し合いや書類のやり取りが煩雑になります。

不動産名義の変更については、とくに時効が設けられていません
そのため、他の手続きに比べると、比較的余裕が持てる手続きといえるでしょう。

ただし、期限がないからといって放置していると、名義変更手続きをしないままに何代も不動産が引き継がれていって、数代前に亡くなった人の名義のままである、という事態も起こり得ます。
そのため、期限が無くても、相続が開始したら不動産名義の変更も速やかに行うようにしましょう。

5、弁護士に依頼すべき理由

相続に関する時効は、1日でも過ぎてしまえば、その権利を一切失ってしまいます

たとえば、相続放棄の時効である3か月は、あっという間に過ぎてしまいます。うっかりしていたせいで、多額の借金を抱えてしまうなどということのないように、早い段階から手続を進めることが重要です。

親族が亡くなった場合は、葬儀やお墓などの手続きが先行して、遺産についての話は後回しになることも多いものです。しかし、その後回しのために時効が過ぎてしまえば、大きな損をするリスクもあります。そのようなリスクを回避するために、なるべく早い段階から、専門家に依頼することをおすすめします。

また、遺産分割協議が進展しない場合にも、専門家が入ることで、法的な根拠に基づきながら効率的に協議を進めることができるようになるのです。

6、まとめ

本コラムでは、相続に関する時効について解説しました。

ベリーベスト法律事務所には、相続開始後の流れと時効の対処について、経験豊富な弁護士が多数在籍しています。

相続についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスまで、お気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています