追突事故の被害者が知っておきたい、事故直後の対応の注意点は?

2020年10月19日
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追突事故の被害者が知っておきたい、事故直後の対応の注意点は?

川越市では、令和元12月末までの1年間で1272件の人身事故が発生し、1522名の方が負傷しています。埼玉県内では、さいたま市と川口市に続いて第3位の事故発生件数です。

交通事故の類型の中で、最も数が多いのが追突事故です。追突事故では、いわゆるむち打ち症となる方が多いですが、事故直後には自覚症状がなくても、事故から数日後にむちうちなどのケガを発症することもあります。
追突事故の被害者が納得のいく慰謝料を加害者に請求するためには、事故直後からの対応が重要です。この記事では、追突事故の被害にあった場合にするべき対応や、被害者が請求できる慰謝料の金額について、くわしく解説します。

1、交通事故で追突された場合にまずするべきこととは?

追突事故とは、信号待ちなどで停車していた車両が後ろから別の車両に衝突される事故のことです。車両の後部が破損するだけでなく、後方からの衝撃を受けることにより被害者の首がムチのようにしなることで、頚部及び腰部にダメージを負い、いわゆる「むちうち」と呼ばれるケガを負う場合もあります。
むちうちの自覚症状が生じるのは数日後からであることも多いですが、「仕事で忙しい」とか「数日後に痛みが出たものを通院していいんだろうか」などと考えて、痛みが出てすぐに病院に行かないでいると、事故とケガとの因果関係を証明することが難しくなってしまいます。したがって、症状が出たら、すぐに病院に行くことが必要です。
交通事故で被害者が受けた損害の賠償は、示談交渉を通じて、加害者に請求します。示談金の金額は、事故とケガとの因果関係や事故における被害者と加害者とのそれぞれの責任の割合によって変わります。被害者が納得できる金額の示談金を得るためには、事故直後からの適切な対応が重要となるのです。

  1. (1)警察へ連絡する

    交通事故が発生したときには、警察への届け出を行いましょう。きちんと届け出をしておくと、後で交通事故証明書を受け取ることができます。この交通事故証明書がないと、最悪の場合には「事故が起こったこと」という事実そのものの証明ができなくなり、加害者に損害賠償を請求すること(≒保険会社から保険金の支払いを受けること)が困難になるのです。
    そのため、事故の被害に遭ったら、必ずその場で警察に連絡しましょう。
    また、追突事故の場合には、事故直後には自覚症状がなくても数日後にむちうちなどの症状が発生する可能性があります。そのため、追突された車両に乗っていた、事故当日には症状がなかったという場合でも、後に症状が出てしまったときには、病院で発行してもらった診断書を提出し人身事故に切り替えておいた方が無難でしょう。

  2. (2)事故の相手と連絡先を交換する

    今後の示談交渉のために、事故直後には相手の連絡先を確保しておきましょう。氏名や住所のほか、車両のナンバー、加入している保険会社や保険プランまで確認できれば、その後の示談交渉がスムーズに進みます。
    なお、事故の相手によっては事故直後にその場で示談を済ませることを提案される場合があります。その場合、そういった提案は必ず断って、示談は保険会社や弁護士を介して行ってください。その場で示談を済ませてしまうと、事故後に発症したケガの治療費などを請求することが困難になるなど、被害者にとって不利な事態が発生する可能性が高いためです。

  3. (3)自分の保険会社に連絡する

    加害者に一方的に追突されて被害者には一切の過失がないように思われる追突事故であっても、事故の状態によっては、被害者にもなんらかの責任が存在する可能性があります。その場合には被害者も自身の保険を使うことになりますし、そうでなくても、自身が加入する保険から加害者からの賠償とは別に支払われる保険金がある可能性があります。そこで、事故直後から自分が加入している保険会社に連絡しておきましょう。
    また、加入している保険のプランによっては弁護士費用特約が付帯されています。弁護士費用特約を用いれば自分の負担金額をゼロにしながら弁護士を利用することも可能です。ぜひ、ご自身やご家族の保険の内容を確認してください。

  4. (4)証拠を保全する

    追突では問題になることは少ないかもしれませんが、加害者の責任を立証するためには、事故に関する証拠や記録を保全することが重要です。事故の直後から冷静に対応して、事故直後の現場の写真や車の写真、ドライブレコーダーの映像などを保全するようにしましょう。通行人などが事故を目撃している場合には、連絡先を教えてもらって、示談や裁判で必要になった場合には証言してもらうようにお願いすることも大切です。
    また、人身事故として警察に届け出すれば作成してもらえる実況見分調書も、客観的で有力な証拠となります。

  5. (5)症状があればすぐに病院に行く

    交通事故によるケガのなかでも一般的な症状である「むちうち」は、事故の衝撃により首がむちのようにしなって首に負担がかかることによって生じます。後方からの衝撃がかかる追突事故では、むちうちは特に発生しやすい症状のひとつといえるでしょう。
    むちうちでは事故直後には自覚症状がなく、数日後に痛みやしびれなどの症状が生じるということも珍しくありません。しかし、あまりにも事故直後から病院での診察までの時間的な間隔が空きすぎると、症状の原因が事故であると証明することが難しくなります。
    少しでも自覚症状を感じれば、念のために、必ず病院で診察を受けてください。

  6. (6)自動車修理会社に連絡する

    追突事故の被害にあったときには、大半の場合、車両の後部に損傷が生じます。
    車の修理費用も加害者に請求することができますが、ケガの場合と同様に、事故と破損との因果関係を証明することが必要となります。「自走できるし、仕事が一段落したら修理に入れよう」などと考え、長期間修理見積等の対応を取らずに放置していると、「事故による損傷なのか否か」が分からなくなってしまい、修理費用の負担で相手方保険会社と揉めることになってしまうかもしれません。
    事故の被害にあったら、早い段階で修理会社に連絡して、破損状態の記録も残しましょう。

2、追突事故の被害者が請求できる慰謝料について

交通事故の被害者が加害者に請求できる示談金の内訳には、治療費や修理費用などのほか、事故により被った慰謝料も含まれます。本来、慰謝料といえば精神的苦痛への賠償金を指しますが、通常、交通事故で請求できる慰謝料は入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類です。

しかし、慰謝料の相場には3つの基準があり、どの基準を採用するかによって実際に受け取れる金額が大幅に変わります。
加害者側の保険会社が提示する金額では、被害者が本来請求できる金額よりもずっと低くなってしまう可能性が高いことはご存じでしょうか?
ここでは、慰謝料がどのような基準で決まるのかについて解説します。

  1. (1)自賠責基準

    自賠責保険とは、日本におけるすべての車両に加入が義務づけられている強制保険であり、法律で定められた最低限の補償を保証することを目的とした保険です。
    最低限の補償であるため、慰謝料の金額は3つの相場のなかではもっとも低いものになるほか、補償額の上限も定められています。

  2. (2)任意保険基準

    大半の運転手は、自賠責保険だけでなく、保険会社が提供している任意保険にも加入しています。
    任意保険は各保険会社がそれぞれに提供しているものであるため、慰謝料の金額も保険会社や保険のプランによって多少の違いがあります。一般的には、自賠責保険よりは高額ですが裁判所基準よりは低額と言われています。

  3. (3)裁判所基準

    裁判所基準とは、交通事故に関する過去の裁判例に基づいて算出された慰謝料額を指します。一般的には、自賠責基準や任意保険基準よりも高い金額の慰謝料になるケースが大半といえるでしょう。

    加害者側の保険会社としては支払う金額が増えることになるため、被害者個人が要求したしても、裁判所基準の慰謝料が提示されることはまずありません。裁判所基準の慰謝料を請求するためには、弁護士が交渉する必要があります。被害者側が示談交渉を弁護士に依頼した場合にはこの基準で慰謝料を計算することが大半であるため、弁護士基準とも呼ばれます。

3、慰謝料請求の流れや注意点

慰謝料の金額は、事故直後の対応からケガの治療や通院、そして示談交渉の進め方によって変わる可能性が高いものです。そこで、事故直後から示談成立までの流れについて解説します。

  1. (1)事故発生直後から治療段階

    警察への届け出や証拠の保全などを済ませたあとには病院で診察を受けて、医師による治療を受けましょう。むちうちなどの場合は整骨院や接骨院などに通いたいと思われるかもしれません。しかし、示談においては医学的根拠のある治療の有無が重要となりますので、病院にも欠かさずに通ってください。
    追突の場合、治療費は任意保険会社から病院に直接支払われることがほとんどですが、被害者がいったん立て替えて、あとに請求する場合もあります。そのときには、病院から発行される領収書を保管しておきましょう。また、通院にかかる交通費や入院にかかった部屋代などの雑費も請求できますので、これらの支出の証拠も保管してください。
    そして、治療費や雑費とは別に、事故によってケガを被ったことによる精神的苦痛への賠償金である入通院慰謝料も加害者に請求することができます。入通院慰謝料の金額は、通院した日数や入院した日数、総通院期間に基づいて算出されます。

  2. (2)症状固定から後遺障害の等級認定

    ケガの治療を進めていくと、やがて、それ以上の治療を続けても治療効果が見込めなくなる「症状固定」と呼ばれる段階になります。この段階でケガの程度がひどい場合などには、残存した症状が「後遺障害」として扱われることになります。
    後遺障害が残った場合には、その精神的苦痛に対する賠償金である後遺障害慰謝料と、後遺障害により失われる将来の収入に対する賠償金である逸失利益を請求することが可能です。これらの金額は、後遺障害の重さ(等級)や事故以前の被害者の収入などに基づいて計算されます。 
    後遺障害に関する賠償金を請求するためには、医師に後遺障害診断書を作成してもらった上で、認定機関(自賠責損害調査事務所)に申請をして、後遺障害等級が認定される必要があります。申請においては書類の準備などの複雑な手続きが必要となりますが、弁護士に依頼して申請を代行してもらうことも可能です。

  3. (3)示談交渉から示談成立

    加害者側の保険会社は、自分たちが支払う示談金の金額を減らすため、被害者にとって不利な要素や加害者にとって有利な要素を強調するものです。
    保険会社は示談交渉を職業として行うプロであり、専門家ではない被害者が加害者側の保険会社の担当者と示談交渉を行うと、被害者にとって不利なように示談交渉が進む可能性があります。納得のいくかたちで示談を成立させるために、被害者側でも弁護士に依頼して、示談交渉を対等な形で進めていくことをおすすめします。

4、まとめ

今回は、追突事故の被害者が事故直後にすべき対応や、示談交渉で適切な金額の慰謝料を請求する方法について解説しました。事故直後は、突然のことに混乱や不安を感じることと思いますが、あわてずに冷静に対応して、病院での診察や警察への届け出を早い段階で行うことがその後の示談交渉でのトラブルを避けることにつながります。

弁護士への相談はどのタイミングでも可能です。事故直後から、少しでも相手方保険会社の対応等に疑問を抱いたのであれば、まずは弁護士に相談してください。ベリーベスト法律事務所 川越オフィスでも追突事故被害による慰謝料請求のご相談に対応しています。お気軽にご連絡ください。

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