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相続前の念書は有効? 生前にできる相続させないための対処法

2022年09月22日
  • 相続放棄・限定承認
  • 相続
  • 念書
相続前の念書は有効? 生前にできる相続させないための対処法

2021年の埼玉県川越市の出生者数は2207名、死亡者数は3618名でした。

親族との関係が芳しくない場合には、相続人のなかに、自分の遺産を相続させたくない人物が含まれている場合もあるでしょう。このような状況では、たとえばあらかじめ念書を書かせて「遺産を相続しない」ことを約束させる、と考える方もおられるかもしれません。

しかし、相続開始前の段階で相続人に念書を書かせても、相続権を放棄させることはできません。もし遺産を相続させたくない人物がいる場合には、弁護士に相談したうえ、法的に有効な生前対策を実施することが必要になります。

本コラムでは、被相続人の生前の段階で念書によって相続放棄をさせることの問題点や、特定の者に遺産を相続させないための生前対策などについて、ベリーベスト法律事務所 川越オフィスの弁護士が解説します。

1、念書の法的効力

「念書」とは、ある出来事に関わる当事者のうち一方が、もう一方に対して約束したい内容を記載して、署名押印をした上で差し入れる文書のことです。

念書は、当事者の一方の意思表示を書面にしたものであり、当事者の合意という意味合いが弱く、契約書のような確実な法的効力があるとはいえないと考えられます。しかしながら、念書に記されている内容に妥当性が認められれば、法的な効力を持ち得ます

2、被相続人の生前に、念書で相続放棄をさせることはできるのか?

遺産を相続させたくない相続人がいるとき、「あらかじめ念書を書かせて、相続権を放棄させよう」と考える方がおられるかもしれません。
しかし、被相続人の生前の段階で相続権を放棄させることはできません。したがって、仮に念書によって相続権の放棄の意思表示をさせたとしても、当該念書に法的効力は認められません

  1. (1)相続放棄には家庭裁判所での申述が必要

    相続人が相続権を放棄するためには、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります(民法第938条)。

    相続放棄とは、相続財産に属する資産や債務を一切相続しない旨の意思表示です。
    相続放棄をした者は、「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます(民法第939条)。

    相続人が自ら相続権を放棄する手続きは、相続放棄以外に認められていません。
    したがって、念書で相続放棄をする旨を約束させたとしても、相続放棄の法的効力は生じません

  2. (2)生前の相続放棄は不可

    そもそも、被相続人の生前の段階で相続放棄を行うことは認められていません。
    相続放棄の期間は原則として、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内です(民法第915条第1項)。

    もっとも、この期間内に相続人が相続財産の状況を調査しても、なお、相続放棄等の相続方法について決定できない事情等があった場合など、期間内に相続放棄等ができない合理的な事情があれば、期間経過後の相続放棄が認められる余地はあります。

3、被相続人の生前でも「遺留分の放棄」は可能

被相続人の生前の段階で相続放棄はできないものの、「遺留分の放棄」が認められる場合はあります。
遺留分を放棄させ、遺言書でその相続人相続させない旨を記載すれば、一切の相続財産を相続させないことが可能です。

ただし、被相続人の生前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可を要する点に注意してください(民法第1049条第1項)

  1. (1)遺留分の放棄の法的効力

    「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた、相続できる遺産の最低保障額です(民法第1042条第1項)。

    生前贈与や遺言書の内容により、最終的に取得した相続財産が遺留分を下回った場合には、遺産を多く取得した相続人等に対して不足分の金銭を請求できます。
    これを「遺留分侵害額請求」などといいます(民法第1046条第1項)。

    遺留分の放棄には、この遺留分侵害額請求を封じる法的効果があります。
    つまり、生前贈与や遺言書によって偏った遺産配分が行われて、結果的に遺留分未満の遺産しか取得できなかったとしても、遺留分の放棄をしている場合には、その結果を受け入れるしかないのです。

  2. (2)生前の遺留分の放棄には、家庭裁判所の許可が必要

    遺留分の放棄は、被相続人の生前と死後、どちらの段階でも行うことができます。
    ただし、相続開始前(被相続人の生前)に遺留分の放棄を行うためには、前述のとおり、家庭裁判所の許可を受けなければなりません(民法第1049条第1項)

    相続開始前の遺留分の放棄について、家庭裁判所の許可が必要とされているのは、「被相続人や他の相続人から不当な圧力をかけられて、相続人の権利が害されてしまう事態を防ぐ」などの理由によります。
    家庭裁判所は、遺留分の放棄を認めてよいかどうかを判断するために、一般的には以下のような観点から慎重な審査を行っていると思われます。

    1. ① 本人の自由意思に基づいていること
    2. ② 遺留分を放棄する理由に合理性が認められること
    3. ③ 遺留分を放棄することの十分な代償が与えられていること

4、特定の者の相続権を奪う方法はあるのか?

相続放棄と遺留分の放棄は、いずれも相続人の意思によって行われる手続きであるため、本人が拒否すれば権利を奪うことはできません。
これに対して、「相続欠格」または「相続廃除」に該当すれば、相続人本人の意思にかかわらず、相続権を失わせることができます

  1. (1)相続欠格に該当すれば、相続権は失われる

    「相続欠格」とは、民法第891条の各号の事由に該当する相続人が、法律上当然に相続権を失うことを言います。

    具体的には、以下のいずれかの事由に該当した者は、相続欠格により相続権を失うこととなります。

    ① 故意に以下のいずれかの者を死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処せられた者
    • 被相続人
    • 先順位相続人
    • 同順位相続人

    ② 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴をしなかった者(是非の弁別がない者および殺害者が自己の配偶者または直系血族であった者を除く)

    ③ 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消しをし、または変更することを妨げた者

    ④ 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者

    ⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
  2. (2)相続廃除の申し立てが認められれば、相続権は失われる

    「相続廃除」とは、相続欠格には該当しないものの、著しい非行のあった推定相続人について、被相続人の請求により相続権を失わせることを言います(民法第892条)。

    被相続人から推定相続人の廃除の請求を受けた家庭裁判所は、以下のいずれかの事由があると認めた場合、対象の推定相続人について、廃除の審判を行います。

    1. ① 被相続人に対する虐待
    2. ② 被相続人に対する重大な侮辱
    3. ③ その他の著しい非行


    なお、推定相続人の廃除については、被相続人はいつでも家庭裁判所に取消しを請求することができます(民法第894条第1項)。

5、まとめ

相続権を放棄する内容の念書は、法的な効力を有しません。
相続権の放棄は、家庭裁判所で相続放棄の申述を行う方法でしか認められず、念書による相続放棄は認められていないためです。

もし特定の相続人に遺産を相続させたくないと希望される場合は、遺留分の放棄や相続廃除など、念書の作成以外の対策を検討する必要があります

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続や生前の相続対策に関するご相談を承っております。
「遺産相続について自身の意向をできるだけ反映したい」、「残される相続人同士のトラブルを予防したい」と希望される方は、ベリーベスト法律事務所にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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